本書は、昨年末の「骨と沈黙」まで何作かを紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」の中短編集。各作品の初出は分からないが、1994年に4編をまとめた形で出版されている。全体として、このシリーズのファンに向けたサービス作品集のような印象だ。
「最後の徴集兵」は、悪口雑言で品の良くないダルジール警部に、転属してきた平刑事のパスコーが初めて会った記念すべき事件。暴行罪で服役していた男タンキーが、出所してきた。彼は逮捕したダルジールを恨んでいて、ショットガンを突き付けてダルジールを誘拐する。そこに居合わせたのがパスコーで、一緒に軟禁されてしまう。タンキーに虐待されながら、逮捕の次第をダルジールはパスコーに語り始める。

「パスコーの幽霊」は200ページほどの中編。1年前に起きた人妻の失踪事件を、パスコー警部が再捜査するのだが、ダルジールは皮肉を言うだけ。でも人妻に似た幽霊が出没するに及んで・・・。一方の「ダルジールの幽霊」は、40ページほどの小編。古い屋敷で何かを引っ搔くような音がして・・・と雰囲気は十分。しかし、その実態は・・・。
「小さな一歩」の舞台は月面。時代は2010年に設定されていて、ダルジールは老人ホームで看護婦に付き添われている。一方パスコーは、欧州連邦の司法省で英国長官の要職にある。月面での作業がTV中継されていて、国籍の違う6人のうちフランス人の男が急死した。尿漏れが、宇宙服内での電源ショートを起こさせてしまったらしい。事件の早期解決を依頼されたパスコーは、ダルジールに協力を求め2人は月へ向かう。
月での最初の殺人事件の容疑者は、デンマークとスペインの女、オランダ・イタリア・アイルランドの男。2人の捜査官は個別に事情聴取をし、あいつが怪しい、こいつが何か隠していると言いあうのだが・・・。
月面の話などはまるきりパロディなのですが、ファンなら喜んでくれますよね。ミステリーとしてより、そちらの面白さが秀逸でした。