新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

民間軍事会社(PMC)のミッション

 2008年発表の本書は、<サンデータイムズ>の記者だったマット・リンのフィクションデビュー作。作者自身は戦闘経験はないようだが、昨日紹介したクリス・ライアンらの諸作を参考に軍事スリラーのアンダーライターを経て自ら執筆したと解説にある。序文をそのクリス・ライアンが書いていて「全てのPMCで闘った人に捧げる」とある。

 

 PMCの傭兵たちの闘いは過酷なものだ。ジュネーブ条約などで保護されていないので、捕虜になれば極めて悲惨な死が待っている。本書の中でも「捕まりそうになったら、殺してくれ」と戦友に頼むシーンがある。

 

 元SASのスティーブは、PMCの社長から特別な依頼を受ける。アフガニスタンタリバンの金庫番をしている組織を襲い、その資金を持ち逃げしろというのだ。目標はタリバンではない。彼らの頭目は殺しても後継者が出てくるだけ。カネを断つのが最善策だが、正規軍は使いたくないということ。

 

        

 

 金塊・ダイヤなど数百万ドル分あるので、それを10人のチームで奪い山分けにしていいというミッションだ。スティーブは、いずれもカネに困っている、

 

・元近衛騎兵隊少佐

・元南アフリカ特殊部隊員

・陸軍空挺部隊

・元IRAで爆発物の専門家

・グルカ兵

・元オーストラリア空挺連隊員

 

 らをリクルートする。結局行けないと通知してくるものもいて、なかなか充足しないが、最後に元スペツナズのロシア青年が加わって、10人になった。このあたり「7人の侍」を思わせる。

 

 彼らは現地で武器を調達する。各人にAK-47とマカロフ、手りゅう弾。特殊装備として、M107狙撃銃、火炎放射器、ヴィッカーズ機銃、サーモバリック(気化)爆弾も手に入れた。タリバンの籠る要塞は地雷原に囲まれている。これを陥落させる作戦は・・・。

 

 実にリアルなPMCの闘い(歩くことやメディックも含めて)でした。特にグルカ兵ガンジューの闘いが見事でしたね。