2020年発表の本書は、ジャーナリスト澤田晃宏氏の<ベトナムからの労働移民レポート>。先進国はどこでも労働力不足が顕著で、外国からの移民・実質移民に頼っている。日本は建前では移民を厳しく制限しているが、実質「技能実習生」という形で受け入れている。彼らなくして、エンッセンシャルワーカー業態は成り立たない。
2019年にはその総数は40万人に迫り、半分以上の21万人をベトナム人が占めている。2016年に中国人を逆転し、フィリピン、インドネシア人が伸び悩む中、10年間で10倍に増えた。
その背景には、技能実習生という「出稼ぎ」をするととても儲かるからだ。自国で就職すると月収が2万円ほどだが、日本に行って運が良ければ10~15万円になる。年間100万円貯めるのも夢ではない。3~400万円あれば豪邸が建つのだ。

運が良ければと言ったのは、大きなリスクが2つあるから。一つは送り出すベトナム側の紹介機関。最大100万円ほどの紹介料を取られるから、多くの人は借金を背負って日本に来る。悪徳業者も少なくない。もう一つは日本の就業先。給料を絞ったり待遇を落としたり、ハラスメントをしたりするところもないとは言えない。言葉も十分話せず苦境に陥ると、彼らは失踪して同国人の口利きで集まり悪事に手を染めることもある。
運の悪いケースは日本では良く報道されるが、ベトナムではあまり知られていない。それは、
・うまくいった例ばかりが伝えられる
・失敗例は親戚一同の恥なので、語られることがない
からだとある。筆者は多くの現場を取材して「共生社会などという言葉を吐く識者は嫌いだ」という。外国人使い捨ての技能実習制度について、大きな疑問を投げかけた形だ。
今年ベトナムを訪れ、現地のIT企業から日本語や日本文化の教育を施しているさまを見てきました(*1)。彼らの日本指向の背景を知ることが出来たのですが、今後の両国の協力関係を考えさせられもしましたよ。