新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ナポリの5月はすぐ裏切る

 2013年発表の本書は、昨年末紹介したマウリツィオ・デ・ジョバンニの<P分署シリーズ>の第二作。21世紀に、ナポリを舞台に展開するイタリア版<87分署もの>。先達と同じく、複数の事件が並走し、やがて関連してきたりそのままになったり、未解決で終わったりする。

 

 エド・マクベインの<87分署もの>は、導入部分が「4月は淑女のようにやってきた」などと美文調で始まるのだが、本書も「5月を信用してはいけない。5月はすぐ裏切る」と警句を言う。ナポリの5月は(行ったことはないが)とてもいい季節、しかしその穏やかな街には裏面があるという意味だろう。

 

        

 

 新生P分署は、指揮官パルマ署長のもと、徐々にチームワークを発揮し始めた。みんな一癖あり家庭では悩みも抱える7人の警官が、それぞれのスタイルで捜査にあたるのだ。街の裏の裏まで知っているピッザネッリ副署長、デジタル捜査に長けたオッタビアに、汚職を疑われた敏腕警部ロヤコーロらが事件を追う。

 

 今回はスポーツジム経営者の家が荒らされたが、何も盗られていないように見える事件と、大富豪の孫が誘拐された事件がメイン。加えてピッザネッリがずっと追い続けている、管内での異常に多い自殺の件がからむ。

 

 白昼美術館見学に来ていた小学生の団体から、ドドという少年が連れ去られた。離婚した母親とその愛人と暮らしているドドの友は、バットマンのフィギュア。ドドは監禁された暗い部屋でフィギュアに「僕らはヒーローだ」と語り掛ける。

 

 身代金要求が来たのは、親ではなく大富豪の祖父。今は引退して車椅子生活だが、かつては裏社会にも深い関係を持っていたようで、脅迫電話に「必ず殺してやる。お前は死んだも同然だ」と言い放つ。

 

 なかなかの迫力の警察小説です。手に入ったのは3冊だけなのですが、本国ではTVドラマ化もされているようです。もっと邦訳が出てくれますように。