新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

未明のアイソラ、女たちの死

 1997年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>。クリング刑事中心の「ロマンス」に続く作品で、ひさびさにホース刑事が登場する。刑事たちは3交代勤務をしている。800-1600の昼勤、1600-2400の夜勤、000-800の深夜勤だ。この週、キャレラとホースは深夜勤にあたっていた。

 

 2人の出勤すると、安アパートで老女が射殺されているとの通報が入った。かつては一世を風靡した名ピアニストだったスヴェトラーナが、2発心臓を撃たれて死に、愛猫も射殺された事件だ。関節炎を病んで演奏が出来ず、近所づきあいもほとんどない、酒浸りの孤独な死だった。

 

 凶器の銃はすぐに見つかり、登録している男も確保できた。ボディガードを生業にしているという海兵隊上がりの男は、

 

        

 

・銃は車を修理工場に置いていて、グローブボックスから盗まれた

・どうせ戻りはしないので、警察へは盗難を届け出ていない

・俺が黒人だから、むりやり犯人にしようとしているだろう

 

 と犯行を否認する。また、その夜。もう一人の女が殺された。19歳までに前科がいっぱいの白人売春婦で、3人の高校生と麻薬ディーラーの男、合計5人でセックスをしていて死んだのだ。高校生たちはいずれも白人でハーバード大進学予定のエリートたち。入学前のひと時に、羽目を外しすぎたのだ。

 

 売春婦にはポン引きがいて、彼は「商品」を殺した相手を探し続ける。麻薬ディーラーのところに乗り込んだのだが、意外な光景が待っていた。一方スヴェトラーナには疎遠にしている孫娘がいて、彼女に大金が遺されていたことがわかる。その娘もピアニストで、2人のボディガードを愛人にして暮らしていた。

 

 1章丸々割いて、全く筋に関係ないエピソードが語られる。トラックのクラクション騒音に悩まされた男が、行政や協会に「何とかしてくれ」と電話するのだが、延々たらいまわしにされ、ついに銃で運転手を射殺する。

 

 乱れ切ったアイソラという町、刑事たちはその傍観者ともいえます。読後、題名にあるノクターンを聴いたような、不思議な気持ちにさせる1編でした。