新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

8万人の野外コンサートの陰で

 1973年発表の本書は、ルース・レンデルの<ウェクスフォード警部もの>。スコットランドの高地地区、ダートムアのキングズマーカムで巨大野外コンサートが開かれることになった。メインキャストはフォークシンガーのヴェダスト。若者たちが思い思いの恰好で、会場にテントを張って開催を待っている。セックスやドラッグも横行して、住民は迷惑顔だ。

 

 ウェクスフォード主任警部たちは、その警備に駆り出された。8万人もの観客を魅了したコンサートは、最後に嵐に見舞われる。それだけでなく、顔をつぶされた女の死体が見つかって、大騒ぎとなった。

 

 最初はコンサート会場に来ていた娘かと思われたのだが、死後数日経っていて年齢も30歳近い。捜査の結果、地元出身の女ドーンであることが分かった。ロンドンでお色気系のウェイトレスをしている。彼女は現地の母親とも疎遠で、数日前に実家からロンドンに帰ると言って出て行った。

 

        

 

 男出入りの激しい女で、死ぬ前にスーパーで2人前の食事とワインを買って、野原の方に消えたと店主が言う。行きずりの犯行ではなく、付き合いのあった男が殺した公算が高い。不思議なのは、最後に目撃された藤色のパンツスーツではなく、サイズの合わない臙脂色のドレスを着て死んでいたこと。

 

 あまり地元に戻ってこない彼女だから、地元で付き合っている男を探す捜査は難航する。しかし、フォークシンガーのヴェダストが彼女と子供のころに知り合いだったことが分かり、捜査陣は色めき立つ。何度か作中に引用されるヴェダストの詩の中に、田舎町での悲劇が隠されていて・・・。

 

 名探偵ではあるが特色がつかめなかったウェクスフォードのスタイルが見えてきました。古典から引用して警句を吐きながら、配下の捜査官には温かく接しする優れた捜査指揮官です。クリスティのようなパズラーに偏らない、英国の地方の情景を描くものと評されるこのシリーズ。ようやく3冊目、もっと探しますよ。