本書は「大鑑巨砲架空戦記作家」横山信義の比較的初期の作品。それまで5~10冊続く戦略級の架空戦記を書いてきた作者だが、一つの作戦に絞って上下巻でまとめる作品もいくつか書いた。本書のそのひとつ、舞台は有名なミッドウェーである。
破竹の勢いで暴れ回った帝国海軍が、最初で最大の挫折を味わったのが、1942年6月のミッドウェー攻略戦。ハワイに近いミッドウェー環礁の米軍基地を排除し、ハワイの太平洋艦隊に圧力をかけるのが目的だった。環礁占領のほかに、跳梁する米軍空母をおびき出して殲滅する目的もあった。この2つの目的を持ったことと、情報統制が不十分だったことで、空母4隻を基幹とする機動部隊は、米軍の待ち伏せを受けることになる。

米軍の工業力と闘志は、先月珊瑚海で大破した空母「ヨークタウン」を修理途上で無理やり出撃させた。これで敵空母は2隻と踏んでいた南雲長官の読みは外れる。史実では、帝国海軍が空母4隻を失い、米軍は「ヨークタウン」1隻を失っただけ。修理中ながら、2度の空襲で炎上しながら堪え、最後は潜水艦の魚雷で沈んだ。戦闘艦は被害を受けるものと考え"Resilience"を考慮した、米軍空母の設計思想が勝った闘いだった。
作者は6月5日に始まった戦闘を、あり得た架空戦記の形で再現した。多少の戦力を残した「蒼龍」と無傷だった「飛龍」の反撃で、米軍3空母は戦闘力を失う。その夜は、帝国海軍の高速戦艦2、重巡2、軽巡、駆逐艦6対、米軍の重巡7,駆逐艦9の夜戦となる。
沈んだ「赤城」から将旗を軽巡「長良」に移した、水雷屋南雲提督が格好いい。水雷戦隊の肉薄雷撃の後の、大型艦同士の砲撃戦に加え、「大和」の46cm砲もミッドウェー陸上基地を苛烈に砲撃する。
ほぼ20年前の作品ですが、久しぶりに読み直してみて面白かったです。休日の昼下がりにちょうどいい、架空戦記でしたよ。