1984年発表の本書は、「King of Story Teller」フレデリック・フォーサイスの<政治スリラー>。今年「戦争の犬たち」を紹介しているが、それは軍事スリラーではあるが発展途上国の独裁者を倒す話と、金融市場での陰謀がからみあっていた。本書はさらに政治寄りになり、ソ連が英国でクーデターを起こそうとする計略を扱っている。
MI6で30年働きながら二重スパイであり、1963年にソ連に亡命したキム・フィルビー(*1)は、モスクワで若いロシア人の妻と暮らしていた。彼がパーティで漏らした言葉「英国の政治的安定度はモスクワで信じられているほど高くない」について、書記長が詳述を求めた。彼は「今は保守党サッチャー政権だが、次の選挙では労働党が勝つ可能性がある。労働党は中道が中心に思えるが、実は20名ほどの急進左派議員が実力を持っていて、彼ら主導の政権がいくつかの工作で作れる」と言った。

新政権が20の政策(*2)を推進すれば、事実上英国で革命を起こせたことになるという。これに魅力を感じた書記長は、信頼を置く軍人・科学者・政治学者とフィルビーで検討チームを立ち上げさせる。
一方英国内では、金庫破りが貴族の宝石を盗む際一緒に持ち出した鞄から、、極秘文書が出てきた。泥棒はこれを政府に送り返したが、高度な情報漏れに戦慄が走る。調査の指揮を執るMI5のプレストンは、政府高官の容疑者24人を、2人にまで絞り込んで24時間の監視を付ける。
書記長肝いりの検討チームは、英国で労働党が勝てるような工作を考えた。準備に1年半かかると聞いた書記長はこれを退けるが、こっそりフィルビーだけを呼び実行を告げる。なぜ英国生まれの自分だけがといぶかるフィルビーに、書記長は「君は私を失えば生きていけない。決して裏切らない人物が必要だ」と言う。
サッチャー首相は、2ヵ月後の6月に総選挙を考えている。英ソのスパイ戦が幕を開けることになった。
<続く>
*2:興味深いので列挙しておく。
・医療分野、教育分野、大手銀行、上位500の民間企業を国有化
・上院(貴族院)の立法拒否権の停止
・新聞、雑誌、BBC、裁判所を統括する委員会の設置
・教育指導評議会にて、全教職員の採用解雇を統率
・労働組合法、警察管理法、公共秩序法、通貨交換管理法の制定
・私有財産を届け出制にし、投資指導法を制定
・EEC及びNATOからの脱退、英国軍の軍縮(1/5に)、英国核兵器の廃絶
・米軍の英国からの撤収要求