トランプ政権とハーバード大学の抗争が激しくなっているが、世界一の知のパワーを持ち、多くの卒業生らからの寄付で潤沢な資金を持っているハーバード大学について、その内実はどうかを示してくれた書として、本書(2001年発表)を本棚から取り出して再読した。
ジャーナリスト夫妻(田中宇氏と大門小百合氏)の共著で、妻は1年間ニーマン財団の招きで同大で学んだ。夫も同行して、最初は2人共知のパワーに感動していたのだが、夫は違和感を覚え始める。帰国して、前向きな視点を持ち帰った妻と、批判的な夫が、共著することで出来上がったのが本書。

ニーマン財団は多国籍のジャーナリストを選抜していた。妻が最初に友人になったのは、亡命してきたコロンビア人。麻薬カルテルの取材で自国にいられなくなったらしい。そんな人たちが、1年間複雑な背景の国際問題について、本音をぶつけ合うのだ。様々なセミナーが開催され、難解な問いを投げかける教授陣との「戦い」が待っている。教材は全てWebに揚がっているので、ノートを写すような授業ではない。
日本では絶対に得られない体験で、妻は舞い上がってしまうのだが、夫の方は教授陣が研究者の法を越えて政治の世界に踏み込んでいることに危惧を覚える。同大の教授陣は明らかにユーゴスラビア紛争に加入していた。教授の一人は、突然駐インド大使となって大学を去った。
1年が終わりそうになったころ、財団は留学生たちを閑静な街に招待した。ここには国務省や情報機関のOBたちが多く暮らしているという。MITやタフツ大フレッチャー校など含め、ボストンの大学にはCIAの影がちらつく。資金を出したり、教授を派遣したり、セミナーを企画する。のんきな妻は「CIAでも引退した人でしょ」と言うが、「CIAは死ぬまでCIAだ」と他の留学生から注意された。帰国後、CIAの「信頼できる人」になってもらおうという試みだったかもしれない。夫は同大を、
・ゼロからシステムを作る特権エリート養成の場
・米国の陰謀を練っているインテリジェンス機関
と捉えた。
最初に読んだ20年前は、「ハーバードってすごいな」と思っただけだったのですが、多少国際政治が見えてきて再読すると、影の部分が強く印象に残りました。陰謀論者のトランプ先生がハーバードいじめをするのも(少しだけ)理解できましたね。