1973年発表の本書は、パトリシア・モイーズの<ヘンリー&エミーもの>。ロンドン警視庁きっての捜査官ヘンリー・ティベット主任警視は、働き者だが妻との旅行が大好き。この初夏にも、田舎の村ゴーズミヤ(*1)に住む妻エミーの姉ジェーンを訪ねていくつもり。週末を前にして、事件さえ起きなければと願っている。今のところは多額の金が動くドッグレースにからみ、一人の賭博師が狙撃されて重態になり、そのライバルが交通事故で死んだ抗争があるくらい。
一方エミーはすでに先乗り、村の人たちと交流をはじめている。姉は犬好きの男が収監されてしまったので、愛犬3頭を一旦引き取ることになった。エミーも手伝うのだが、2頭しか見つからない。2頭の犬にも歓迎されたヘンリーは、収監された男の罪が飲酒運転致死で、その被害者が賭博師の頭目だったことを知って驚く。

月曜日に職場に戻ったヘンリーは、ゴーズミヤの事件の内偵を始める。収監された男は運転した記憶もないと言い、賭博師の方もその村に出かけて行った理由が分からない。男が飼っていて、エミーらが捜しても見つからなかった「第三の犬」が、事件のカギを握っているらしい。その犬はドッグレースの花形グレイハウンドだが、レースには一度出て惨敗した記録しかない。
また、今のレースの王者であるグレイハウンドが行方不明になり、犬を巡る八百長の可能性が見えてきた。内偵を進めるヘンリーだが、身分を隠すため単身捜査をしていて、何者かに捕まってしまう。逃げようとして賭博師一味の乱暴者と渡り合い、軽傷ながら撃たれてしまった。ヘンリーは妻や部下の助けも借り、犯行組織にわなを掛ける。「ティベット主任警視は依然意識不明、回復するかは五分五分」とメディアに流したのだ。
ドッグレースは人間が介在しない分八百長がしづらく、マニアも多い。その仕組みが延々語られ、勉強になりました。相変わらず「鼻」が利くヘンリーですが、今回はエミーのサポートが少なく鴛鴦探偵ぶりが低調だったのが残念でした。
*1:ロンドンから列車で1時間ほどの村