本書は以前「江戸八百八町物語」を紹介した、剣豪作家柴田錬三郎の代表作。「週刊新潮」創刊(1956年)に合わせて、同誌に延々連載された作品である。大目付の娘がころび伴天連に犯されて生まれた子、眠狂四郎。邪剣である「円月殺法」で、並み居る剣客や御庭番を斃していく。
何度も映画化され最初は鶴田浩二主演で3作、その後市川雷蔵のはまり役になり12作が作られた。雷蔵死後松方弘樹主演で2作作られたが、これはあまり受けなかったという。後年田村正和主演でもTV放映されてもいる。映画は数作見たのだが、原作を読むのは初めて。解説に「週刊誌の連載」とあって、その構成が分かった。
というのは本書は「眠狂四郎無頼控(1)」で、全6巻シリーズの最初のもの。その後1ダースほどの巻と独立した短編がいくつかある。これらの原型は、週刊誌連載。週に一度というので長いものは書けないし、読み手も昼休みや電車の中で手軽に読める長さがいい。だから、全体として大河ドラマ風なのだが、1編1編が読み切りスタイルになっている。

20~30ページの中に、奇妙な発端・強敵や苦しむ男女の登場・狂四郎のニヒルな解決・エロチシズム・鮮やかな剣技が、すべて収まっている。出版されるや「週刊新潮」をヒットさせ、週刊誌ブームを作った記念碑的シリーズである。本書には初期の22編が収められている。
狂四郎は呪われた産まれであり、ハーフとしての外観から世間と隔絶されて育てられた青年である。剣技に関しては天才的な素養を示し、豊臣秀頼の佩刀だったという「無双政宗」を帯びて人を斬る。その際、相手に憐憫の情をかけることはない。
下段に構えてゆっくりと弧を描くように剣を上げていき、そして下ろしてくる。その間に強烈な圧力を相手にかけ、我慢できなくなった相手が斬り込んでくると「後の先」をとってこれを斬るのだ。
事件の背景も、幕閣の権力争い・旗本と大名の軋轢・父や兄を殺された仇討ち・麻薬の抜け荷・医師や豪商の栄華など、「江戸八百八町物語」にもみられる江戸時代の風情が満載である。
しかし毎週短いとはいえ必ず書かなくてはいけないという、週刊誌連載は大変だと思います。それで全体を通して流れのあるものになっていないといけないのですからね。