2022年発表の本書は、IMFエコノミストの経験もある東京都立大教授宮本弘暁氏(労働経済学)の「日本経済論」。日本経済低迷の原因は、その未熟な資本主義にあるとの主張である。
2022年当時岸田内閣の「新しい資本主義」が提唱されていたが、筆者はその前に「普通の資本主義」を確立してから考えるべきことと言っている。失われた30年では「新自由主義」が掲げられた時だけ成長したものの、他の時期に日本経済は停滞している。主原因は、当たり前の競争をさせなかったことにあるという。
経営者にアニマルスピリットが無くなり、デジタル化の遅れや人的投資の低下で、資本・労働の両面で質が劣化し、生産性が上がらないのだ。この閉塞状態を打破するには、
・労働市場の流動化を進めること
・市場に生産性の高い企業が進出すること
・生産性の上がらない企業は退出すること
だとある。以下は、その進捗を測る51のデ-タであるが、特徴的なものだけを紹介する。

・ビッグマック指数 41位、1位スイスの半分以下
・大学に入学する25歳以上の割合 1.4%、OECD平均の1/10
・CEOの内部昇格率 97%、欧米では75~79%
・CEOの他企業での経験 82%がなし、欧米では90%前後が経験あり
・転職意向のある人の割合 25%、比較的低いアジアでも最下位、インドは52%
・従業員エンゲージメント(愛着)ある比率 5%、世界平均は20%
・自己啓発を行っていない従業員割合 46%、韓国12%、中国6%
要するに内向きCEOのもと、会社は嫌いだが転職する気も自己啓発する気もない従業員が多いということ。これではデジタル化以前に、生産性が上がる方がおかしい。
筆者は改革のフィールドとして、社会農業と教育を掲げています。農業は1法人当たりの耕作面積が日本は3ha、米国180ha、英国90ha、独仏60haとあります。小泉農業改革が期待されるゆえんでしょう。