新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アナログ時代からの偽情報工作

 2016年発表の本書は、調査報道ジャーナリストであるニコラス・スカウ氏の「CIAの黒歴史」。アナログ時代からCIAは、多くの偽情報で世論操作などの工作を行っていた。CIAは自らの非合法行為を隠ぺいし、それを暴こうとするジャーナリストを陥れ、偽りのイメージで世論を操作してきた。

 

 CIAは報道機関とハリウッドに影響力を持ち、工作に活用していた。しかし1973年シュレジンジャーが長官に就任し、これまでの違法活動をリストアップさせた。カストロ暗殺の失敗やコンゴのルムンバを操り死なせた事件などである。報告書は700ページにも及び、それ以降CIAは国内のジャーナリズムへの関与ができなくなった。しかし海外のメディアに対しての工作は禁じられておらず、海外メディアを経由して国内に偽情報を流すことは続いた。

 

        

 

 またジャーナリストを支配しなくても、従軍記者の行動を制約して「見せたいものだけ見せる」ことは可能だった。ベトナム以降、イラクでもアフガニスタンでも、そういう記者からしか市民は情報を得られていない。アナログ時代から通信技術の発展を利用した傍受や監視は、日常的に行われた。これはスノーデンが暴露した通り(*1)である。

 

 CIA自身や軍事行動を美化するプロパガンダも、多く手がけた。グアンタナモ収容所は見学ツアーがあって、現実とはかけ離れたスタジオのような環境を取材させた。映画「アルゴ」は、イラン革命時数名の米国大使館員を救出する話だが、非常に美化した形で映像化された。この時は、CIA本部にカメラが入ることができたほどだ。またトム・クランシーの諸作の映画化は、CIAが全面協力したと伝えられる。

 

 冒頭ビン・ラディン暗殺は、数年かけてCIAが居場所をつかんだことになっているが、実はパキスタン当局が数年前から家族ともども捕えていて、これをパキスタンに迷惑をかけない形で「執行」したとあります。

 

 国際政治に裏があるのは当然として、やはり米国諜報機関は「Deep State」を疑われる一面は持っていたようですね。

 

*1:監視を抑制できるのは監視 - 新城彰の本棚