1939年発表の本書は、不可能犯罪の名手ジョン・ディクスン・カーの<フェル博士もの>。屋外の密室殺人含めて2つの不可能犯罪の謎が提供される、作者の独壇場ともいえる本格ミステリー。青年弁護士ヒュー・ローランドが恋した娘ブレンダは、両親を亡くして父親の友人ヤング博士に引き取られた可愛い娘。博士は後見している美青年フランクとブレンダを結婚させることを希望し、2人は婚約中だ。
ブレンダは本気ではないと見たヒューは、割り込もうとするのだがフランクも堂々たるドン・ファンぶり。一方博士のもとには、ロンドン警視庁のハドリー警視が、フランクの素行の悪さを報告に来ていた。しかもある男が、彼を殺そうとしているとの情報もある。それでも博士はフランクをかばったのだが、通り雨が過ぎた屋外テニスコートで、フランクの絞殺死体が見つかった。
ポプラの樹・金網フェンス・芝生に囲まれた長方形のコートには、フランクのものらしい足跡しかなく。絞殺犯が近寄り、逃走した足跡がない。

ヒューが気付いたときには、死体に歩み寄って戻ってきたブレンダの足跡は加わっていた。このままでは彼女が容疑者になると、ヒューは足跡に工作しようとするのだが、ハドリー警視がフェル博士を呼び寄せたことを知り、偽装は無理だとあきらめる。
金網のケージの中で、足跡もなく被害者に近づき、殺して逃走する。どうすればできるのか?仮説は一杯出てくるが、どうにも現実味がない。それでも容疑者が現れるのだが、その男も衆人環視の中、射殺されてしまった。連続殺人かもしれないが、フランク事件の関係者は一堂に会していて、相互にアリバイを認め合う状況だ。
2つの不可能犯罪に、フェル博士は物理的な解と心理的な解を用意します。「緑の・・・」に続き、作者得意のオカルティズムは見られません。純粋に不可能に見える犯罪をどう打ち破るか、ある種の本格ミステリーの醍醐味ですね。