新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

金細工人家の披露宴での事件

 1983年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第七作。イングランド南部の内戦は続いていたが、シュルーズベリの町はスティーブン王の勢力圏で平穏さを取り戻していた。しかしある金曜日の夜、ラドルファス院長以下修道士たちが祈りをささげていると、一人の男が逃げ込み彼を追って村人たちが乱入してきた。

 

 院長は暴漢をたしなめ、殴る蹴るの暴行を止めさせたのだが、金細工人の息子ダニエルは、この男が父親に怪我をさせ金庫の中のものを盗んだという。リンチに掛けられそうな男は、修道院に期限付きで匿われることになった。リリウィンという男は旅芸人でダニエルの結婚披露宴で芸をしていて追い出された、気付いたら村人が追ってきて盗みなどしていないという。怪我をした金細工人とショックで倒れたその母親の治療にもあたったカドフェルは、旅芸人を助けようと捜査を開始する。

 

        

 

 おそらくはロマと思われる、リリウィンが語る旅芸人の生きざまが厳しい。捨て子で旅芸人一座で物心つく頃から奴隷のように扱われ、青年になって逃げだしてからも人として扱われない。音楽を教えてくれた老人にもらった弦楽器も、騒動で壊されてしまい涙している。

 

 カドフェルは彼をかばいながら、金細工人の隣家に住む錠前屋が怪しいとにらむのだが、その男が殺されてしまった。運の悪いことに修道院から出てはいけないリリウィンが、恋人と逢引きしていていてアリバイがない。それでもカドフェルは彼を信じ、金細工人の家に問題があると考える。ずっと吝嗇な祖母が家計を仕切っていて、30歳になる孫娘が諸事を行っていた。そこに弟の新妻がやってきた「竈の闘い」が事件の根底にあるのでは?

 

 かの時代のイングランドも、家父長制に見えて女性の発言力が大きかったようです。女流作家として、そんな主張が見え隠れする1編でした。