新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

南カリフォルニアの入り江

 1989年発表の本書は、南カリフォルニアニューポートビーチ在住のエリザベス・C・ウォード作の社会派ミステリー。以前は素朴な港町だったニューポートビーチは、なだれ込む不動産投資資金や移民難民によって、様相を一変させていた。金持ちのリゾートとしてのきらびやかなエリアと、貧困層が集まって住む治安の悪いエリアに二極化していたのだ。

 

 この町の高校で英語教師をしているジェイムズは、理想主義者で環境保護活動家のケイトと離婚し、地主のスヴェンソン老人の借家人として暮らしていた。スヴェンソン老人は大家というより年の離れた友人という関係で、時々一緒にグラスを傾けていた。その夜、呑んだ後ビーチへ一緒に出ようという老人の執拗な誘いを、ジェイムズは断って帰った。しかし、その夜老人は猟銃の発砲で死んでしまった。当初は自殺とみられたのだが、状況を再検討したところ殺人の公算が高くなった。

 

        

 

 老人の遺言書が開かれると、実の娘・息子にはわずかな資産しか遺されておらず、大半の不動産(島まるごとひとつも入っている)は、ジェイムズとケイトに贈られていた。条件は二人が仲直りすること。

 

 驚く二人だったが、警察はジェイムズを有力容疑者と見たし、以前から仲の悪かった娘婿シルヴァスは露骨に嫌がらせをしてくる。そのシルヴァスも不審死して、ついにジェイムズはスヴェンソン殺しで訴追されてしまう。

 

 事件のカギを握るのはジェイムズの教え子デイヴィッド、優秀な生徒だがなぜかジェイムズを避ける。父親のマッキアンは建設業者、議員を抱き込みビーチの大規模再開発をもくろんでいる。ディヴィッドが持っていた人名リストには、放火の前歴のある男たちの名前がならぶ。

 

 リゾート開発で潤う業者、やってくる金持ちたち、うぶなカリフォルニア娘はスタンフォードで教育を受け(環境)理想主義になって戻ってくる・・・近代米国が抱える社会問題をローカルな視点で暴いた佳作でした。