新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

国家が生き抜くための7箇条

 2024年発表の本書は、アジア・パシフィック・イニシャティブ(API)の創設者船橋洋一氏の「国際秩序が壊れた今の地政学」教本。これまで「シンクタンクとは何か*1」など3冊を紹介していて、その最新論説が本書である。

 

 米国の孤立化で国際紛争が頻発している今、地政学をもう一度肝に銘じるべきとして、冒頭7箇条が示されている。

 

1)国際システムは、自己保存を最重要課題とする国家を単位とするため、本来的にアナーキーであり、弱肉強食の世界である

 

2)平和と安定のためには、勢力均衡と国際秩序の正当性が必要である

 

3)平和維持には、抑止力が必要である

 

4)物事は、当面「解く」ことが出来ないこともある。その場合は「収める」ことでしのぐ

 

5)国家の生存にとってパワーは富より優位であり、安全保障は国益より重要である

 

        

 

6)戦略は統治を超えられない。統治の要は政治指導力である

 

7)歴史は国々の記憶である。国家は、歴史から学ぶことができる

 

 本編の内容は、上記7箇条が必要だと感じさせる2020~2023年の国際政治関連記事の集積。テーマはコロナ禍・ウクライナ戦争・米中対立・インド/太平洋の4つ。ベトナムがコロナ禍を上手く切り抜けたコツが「チャイナリテラシー:中国の発表を疑ってかかること」だという話が面白かった。

 

 筆者は「国家が地政学の目的を果たすため、経済を力として利用する事」を地経学(*2)と呼んでいる。その面での留意事項も7点明示してあった。

 

・日本は経済安全保障では構造的赤字国

・経済安全保障の安定には、国際秩序、法の支配、公正な市場などが必要

・経済の相互依存は平和を必ずしも約束しない

・同盟国、同志国、友好国との連携が不可欠

・セキュリティは一番弱い輪までしか強くならない

・国家安全保障に役立てる公共起業家精神が必要

・国家安全保障には、戦略的自律性、戦略的不可欠性、官民の戦略的対話が必要

 

 当時よりもさらに厳しさを増した国際情勢において、多くの人がこの感覚を持つことが必要でしょうね。

 

*1:危機が生む政策起業イノベーション - 新城彰の本棚

*2:経済安全保障の教科書 - 新城彰の本棚