「浦上伸介&前野美保シリーズ」の作者津村秀介は、60作あまりの作品を遺した。西村京太郎らのような多作家ではないが、1990年代には年間3~4作品を発表し「脂がのっていた」時期に、66歳で急逝されたのが惜しまれる。
本書の発表は1994年、「浜名湖殺人事件」(1990年)で伸介の相棒になった女子大生前野美保がしっかりレギュラーに定着し、谷田実憲と伸介の「酒飲みおじさんコンビ」に華を添える役割を果たしている。本書も、長く未読だったけれど見つけることができたもの。
今回の事件は横浜に本社を置く同族会社「有賀」の社員が、浜松町駅近くのマンションで殺された事件。被害者のOL美紀は、有賀社長の愛人だった。社長は2代目、先代(創業)社長の娘玲子の夫で有馬家に婿養子に入った男だ。事件の起きた日、この三角関係の3人は、美紀のマンションで会うことになっていた。3人の当日の足取りは、
◇美紀
故郷の高山からマンションに戻る。旅館を11時前に出てL特急<ひだ>で名古屋に出て、新幹線で東京へ。マンション到着は16時ころ。死亡推定時刻は、15~16時との検死結果。
◇玲子
愛人の家で会うことに怒り始め、会合をすっぽかして東京から<こだま>に乗って熱海咲見町のマンションに行ってしまった。16時ころには小田原あたり。

◆有賀社長
2泊3日の福岡出張からの帰路で、博多駅1235の<ひかり>で東京へ。車中で玲子が来ないことを知り、東京行きを諦めて新横浜駅で下車、本社に戻った。16時ころには新大阪あたり。
しかも玲子は咲見町のマンションで、夫に似た男に殺されそうになったと訴えている。その現場には、美紀を絞め殺したのと同じロープが残されていた。さらに熱海の錦ヶ浦で、その夜身元不明の男が突き落とされて殺された。熱海警察(よく2時間ドラマのロケに使われる来宮駅前の建物)と警視庁に加えて、「有賀」の本社のある神奈川県警も参加しての捜査が展開される。
警察は上記のアリバイを確認するのだが、要所要所に目撃者がいて有賀社長も玲子も犯行は不可能に見える。谷田・伸介・美保のトリオは、容疑者ではなく被害者の足取りを追い始める。
トリックの半分は見破ることができ、スマホの乗り換え案内で確認しました。昔は時刻表めくっていたのですが、便利になったものです。ただ1993年のダイヤではないので、あたりを付けただけですが・・・。