新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

血生臭い<倒錯三部作>完結

 1992年発表の本書は、ローレンス・ブロックの<無免許探偵マット・スカダーもの>。今年になって紹介した「墓場への切符」「倒錯の舞踏」に続く、倒錯三部作の完結編だと解説にある。アル中の元警官で、高級娼婦エレインと半同棲の生活を送っているマットには、前2作をも上回る血生臭い事件が舞い込んでくる。

 

 アル中矯正の会でよく顔を合わせていた男ピーター、レバノン人の彼には麻薬ディーラーをしている弟キーナンがいる。キーナンの美しいパレスチナ人の妻が、白昼のマンハッタンで白人の男たちに拉致された。キーナンは40万ドルのカネを用意して身代金を払ったのだが、妻は切り刻まれた死体となって返されてきた。

 

 復讐を誓ったキーナンは、兄とその知人のマットに協力を求める。拉致の目撃者はいるのだが、物的証拠がほとんどなくマットは何度もかかってきた脅迫電話の記録を、青年ハッカーを雇って電話局から盗み出させる。

 

        

 

 電話は全て公衆電話からだったが、犯人たちのヤサはおおむね絞ることができた。さらにマットは類似の事件を調べ、

 

・女教師がレイプされて切り刻まれて捨てられた事件

・立ちんぼの娘がレイプされ、乳房を切り取られた事件

 

 が同一犯のものではないかと推測する。犯人たちはまた新しい犠牲者を探すだろうと、暗黒街のルートを使って麻薬ディーラーらに警告すると、ロシアマフィアの娘が誘拐される事件が起きた。

 

 「歩いている時は女だが、車に押し込んでしまうと肉の塊としか見えなくなる」

 

 と後に犯人の一人が語るのだが、背筋が寒くなるような言葉だ。被害に遭いながら生き延びた娘に、高級娼婦エレインは優しく接する。また街を知り尽くした賢い黒人少年TJも、マットを助けて大活躍する。ロシア娘を生きて連れ帰るため、マットは命を的に凶悪な犯人たちに対峙する。

 

 胸の悪くなるような事件を扱いながら、どこか温かいものを感じさせてくれるシリーズです。次の作品では、いよいよマットとエレインが結婚するそうで、独身マット最後の事件となりました。