新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ル・カレの最高傑作巨編(前編)

 1977年発表の本書は、先月紹介した「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」に続くジョン・ル・カレ<スマイリー三部作>の第二作。作者の最高傑作との評価され、英国推理作家協会賞も受賞した900ページを越える巨編である。

 

 前作で英国諜報部<サーカス>に潜り込んでいたモグラは退治できたのだが、<サーカス>自身も大きな傷を負った。予算を削減されて有力な要員を解雇せざるを得なくなり、人員は1/4になった。海外の拠点も続々閉鎖、アジアに残った拠点は香港ぐらいだ。

 

 再建を託されたスマイリーは、側近のギラム・ソ連の専門家サックス・中国の専門家ディサーリスの助けを受けて、要員の呼び戻しも含めて忙しく動き回っている。そんな中、仇敵であるソ連情報部の中心人物カーラ(*1)の弱点らしきものが見えてきた。それはパリからビエンチャンを経由して、香港に伸びる資金輸送ルート。毎月25,000ドルほどが送られている。

 

        

 

 スマイリーはフィレンツェで暮らしている新聞記者のウェスタビーを呼び戻し、この件を担当させることにした。端正な容貌と貴族的な所作を身に着けている青年で、「スクールボーイ閣下」とあだ名されている男だ。彼はフィレンツェでの暮らしにも飽きていたのか、依頼を引き受け香港に渡る。

 

 資金流の終点は、英国生まれの中国人実業家ドレイク・コウ。遊び人で競馬好きの男である。また流通過程で、リカルドという雇われパイロットの名前も浮かんだ。スマイリーとそのチームはこの2人の周辺を洗い始める。

 

 ドレイクにはネルソンという弟がいた。2人は、WWⅡ中の混乱した背徳都市上海で育った。ドレイクは10歳代半ばで国民党軍に徴兵されたが、ネルソンの方は重慶共産党軍に入り留学したソ連で造船の学位も得て、戦争が終わった上海に戻ってきた。2人を知る老宣教師は、ネルソンは死んだという。

 

 リカルドの方はCIAから情報が入った。インドシナでCIAの手先として、麻薬を運ぶ仕事をしていたらしい。CIAが撤退しても、独力で麻薬輸送をやっていたと思われる。スマイリーは、コウ兄弟やリカルドが今もソ連の手先として動いていると睨むが、リカルドも死んだと伝えられる。スマイリーは「今度の事件では、誰もが死んだふりをする」と愚痴る。

 

<続く>

*1:女名前だが、男である