新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

都筑流「怪談百物語」

 軽妙な短編の名手で、以前「退職刑事」などを紹介した作家都筑道夫。ミステリーのジャンルに留まらない、幅広い作品がある。SFあり、ホラーありなのだが、1986年発表の本書は近代ホラーの短編集。設定として、週末ごとに集い怪奇譚を披露しあう「深夜倶楽部」で語られたストーリーをまとめたことになっている。

 

 登場する語り部は、幕末の話を持ち出す老人もいれば、まだ20歳前の青年もいる。彼らの話を作者が聞いて、何も言わないこともあればオチのようなことを話すこともある。多分何かの雑誌の連載短編を集めたのだろう、長さが40ページほどとほぼ同じになっている。

 

 解説はやはり幅広い作風で知られる宮部みゆきが書いていて、この都筑短篇集は岡本綺堂の流れを汲んでいるという。僕自身は、岡本作品は「半七捕物帳」しか読んだことがないので、この感覚は理解できない。確かに「半七もの」には化け猫がでてくるような怪談はあるが。

 

 幕末、江戸城の門近くの樹木で首つりがあったとする「首つり御門」は、その雰囲気を一番出している作品だろう。死神のような男に誘われると、誰もが自発的に首吊りしてしまうのだ。ただその死体が消失したり、また現れたり生き返ったりするホラーだ。

 

        

 

 幽霊は、いくつもの作品に登場する。彼岸花に姿を変えて毎年庭に咲き続ける死霊あり、殺された家に現れエロチックな姿態を見せる生霊あり、猫に守られて成長する吸血鬼もいる。

 

 一番ミステリーっぽいものとしては「鏡の国のアリス」があって、美女ではないが豊満なスタイルのモデル出身の阿里子が、不思議な男と同棲した事件。元気だったり、しおれてしまったりの落差が大きい男らしい。彼女は二人一役を疑うのだが、そのうちに「男は鏡の国に住んでいて、現実世界に出てくるとエネルギーを消耗する」と信じ始める。

 

 合計7つのホラー短編なのだが、正直全く怖くなかった。連続する猟奇殺人事件や、苛烈な戦場での暴力シーンを読み慣れてしまった僕には、幽霊などと言われても「あ、そう」くらいの感覚なのだ。どうもそれ自身が(僕の)問題なのだが、現代人は刺激が多すぎて古典的なホラーなど、刺激の内にも入らないのかもしれない。

 

 そうなると都筑ホラーは、ユーモア小説になってしまうかもしれません。時代は変わったと言うことでしょうね。