新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

エラリー探偵社への奇妙な依頼

 1939年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーン初期最後の作品。この後3年ほどブランクがあり、中期の傑作「災厄の町」に続く。エラリーは、父リチャードの警官仲間だった男の息子ボー・ランメルと探偵社を設立することになった。実際の探偵業はボーがやり、エラリーは「名前貸し」という約束。

 

 早速、億万長者の依頼人コール氏がやってきて「やがて事件が起きたら調査してくれ」と多額の契約金を置いて行った。その「事件」はすぐ起きる。豪華ヨットでカリブ海を巡っていたコール氏が船上で死去し、検視も何もされぬまま水葬されてしまったのだ。折あしくエラリーが盲腸炎で入院、ボーはエラリーになりすましてコール家の事件を担当する。

 

        

 

 コール氏は自らも独身だったが結婚を忌み嫌い、弟と妹が結婚して以降は付き合いを断っていた。2人には各々娘がいて、その2人だけが遺産相続人に指定されていた。弟の娘マーゴは30歳過ぎの妖艶な女、フランスで見つかった。妹の娘ケリーは20歳代の女優の卵、ハリウッドで友人ヴェラと暮らしているのをボーが探し当てた。ボーとケリーは愛し合うようになり、一緒にニューヨークに戻るのだが、遺言書には「結婚すれば相続人の権利を失う」とあった。

 

 富豪の生活を楽しむケリーだったが、何者かが命を狙ってくる。最初はナイフ、次は馬に細工、そしてガレージで一酸化炭素中毒に・・・。狙っているのはマーゴだと考えたボーは、ケリーを連れてホテルに逃れるがマーゴも追ってきた。そして殺人事件が・・・。

 

 旧題が「許されざる結婚」で、異常な遺言書に翻弄されるヒロインの悲恋がテーマ。ただ色ごとの苦手なエラリーではなく、ボーというキャラを使ったのが作者の工夫である。初期の華麗な推理一辺倒から、方向転換を図ろうとしたのが良く分かる。しかし満足できなかった作者は、ブランクをあけて新シリーズ「ライツヴィルもの」に開眼することになります。初期作品の掉尾を飾ることになったのですが、華麗な推理は衰えていませんよ。