1930年発表の本書は、「ピーター・ウイムジー卿もの」で知られるドロシー・L・セイヤーズのノンシリーズ。全編は登場人物が親戚や愛人などに宛てた手紙と、何人かの供述、および新聞記事で成り立っている。主要な登場人物は、極めて少ない。
ジョージ・ハリソン 自然に詳しい電気技師
マーガレット ジョージの2番目の妻、20歳以上若い
アガサ ハリソン家の家政婦、中年の独身女性
レイザム 画家、ハリソン家のメゾネットに下宿している
マンティング 詩人、レイザムと一緒にメゾネットを借りて住んでいる
そこそこの資産家だが、老いて衰えも見えるジョージ。若い妻とは意見が合わないこともあって、時々山に囲まれた別荘に一人で行くことがある。山のキノコには詳しく、キノコ料理も大好きだ。

ジョージがいないと、ブルームズベリーのハリソン家では、若い妻・独身の家政婦・2人の青年が顔を突き合わせて暮らすことになる。アガサが妹に宛てる手紙には、青年たちの(セクシーな)ことが綴られる。マンティングは詩集を書き下ろしながら、ハリソン家の中を観察した結果を、恋人宛の手紙に綴る。ある日、アガサが下宿人の一人にレイプされそうになったと騒ぎ出す。これは妄想ではないかと思われたのだが、ハリソン家内には緊張が走る。そして、別荘に行っていたジョージがキノコ毒にあたって死んだ。
彼の死は誤って毒キノコを食べてしまった事故として扱われたのだが、ジョージと亡くなった先妻の息子ポールがアフリカから帰国し、殺人ではないかと捜査を始める。捜査に使ったのが、アガサやマンティングが書いた手紙。ただ地元警察は、仮に殺人だとしても毒を飲ませた手段がわからないと消極的だ。
作者のウイムジー卿ものには「毒のない毒殺事件」もありましたが、本書では特に医学博士ロバート・ユースタスが共著者となっています。彼の発案と思われる、毒キノコのトリックとは・・・。手紙の積み重ねによるサスペンス、なかなかの効果でした。