池波正太郎「鬼平犯科帳」は、単行本が19巻+1、文庫版が24巻+1(*1)。文庫版で第14巻までは短編集だが、15巻目(単行本では10巻目)の本書が初の長編である。文庫版の出版は1985年だった。
正月明け、長谷川平蔵は東海道筋将監橋のたもとで、黒覆面の大男に襲われた。男は刀身を小脇に側める不思議な剣を使った。闘いは引き分けとなったが、平蔵の着物は裂かれていた。以後、平蔵はその剣士に斬られそうになる夢を見るようになった。謎の流儀は<雲竜剣>と思われたが、半年たった盛夏に手練れの同心が斬殺された。平蔵は、下手人はあの大鴉のような剣士だと考える。加えて次の晩にも同心が一人、一突きで殺された。

鬼平は、配下の与力同心に「単独行動をするな」と申し渡しながら、自分は一人で市中を歩く。自らを囮にして、もう一度あの剣士をおびき出そうというのだ。一方鬼平が張り巡らせた密偵網は、老鍵師が新しい仕事をしようとしていることを突き止める。その賊の本拠地は水戸街道の牛久あたり。<雲竜剣>のルーツもそこにある。
捜査は老鍵師の動きを見張り、牛久あたりの聞き込みをし、江戸市中での押し込み目標を探る3本立てになった。やがて尾州藩お出入りの問屋尾張屋に住み込む飯炊き老人と、彼がよく利用する鰻の屋台が捜査線上に浮かぶのだが・・・。
<雲竜剣>を使う2人の剣士の対決は読みごたえがあり、盗賊たちと鬼平一家を交えた捕物劇も爽快でした。江戸時代に発展したという鰻の料理法も、味を添えていましたしね。作中、小名木川や万年橋、佐賀町という見知ったところが出てきます。尾張屋は佐賀町にあり、鰻屋台が出るのが万年橋。最近この辺りを歩くようになり「鬼平で取り上げられた場所*2」という高札も見ました。嬉しかったですよ。
*1:+1は番外特別長編「乳房」