1939年発表の本書は、思想家大川周明氏が遺した<大日本帝国が見るべき日本の歴史>。著者は5・15事件に連座したとして収監され、釈放されたのちに本書を著している。日中戦争から太平洋戦争に至る精神的背景になった書と見られ、著者はA級戦犯に指定された。しかし精神障害を理由に免訴され、戦後もコーランを全訳するなどして1957年、71歳で死去している。
以前張作霖暗殺事件の首班河本大佐の一代記「赤い夕陽の満州野が原に*1」を紹介したが、その中に著者の言葉「超大国の時代となり、英米ソ中に対し日本は中国問題を解決しないと生き残れない」とあったので、その思想を一度勉強したかったから買ってきたもの。
神話時代から始まり、飛鳥時代までは大陸や半島からの、技術・宗教などが渡ってきたことを評価している。しかし平安時代以降は、日本の独自文化は大陸や半島に勝り、技術なども遜色なくなったとしている。ただ平安時代には「天皇を中心とした神の国」のはずが、公家や武士によって権力が簒奪されてしまったことを嘆いている。

藤原道長や平清盛などは「怨敵」だが、織田信長・豊臣秀吉は天皇家を畏敬した忠臣と評価している。もちろん徳川家は前者の方で、明治維新・王政復古の「偉業」に繋がっていく。しかし明治以降は国内を統一しただけではだめで、国際競争に勝たなくてはならなくなった。
しかし戦争は(勝っても)平民を疲弊させる。今は平民は疲弊し悪税を続けられ、富豪は特別に遇されている。中華民国政府は米英ソらの援助を受けて日本軍に抗しているのは、これらの国が日本を指導者とするアジア復興を望んでいないからだ。だから日本は、
・積年の禍根を絶てとの天皇の心に沿い
・東亜新秩序を建てるために努力を長期に続け
・全アジア復興の魁となり、世界維新を起す
べきだと筆者は主張する。
発禁扱いではなかったもののずっと顧みられなかった本書は<毎日ワンズ>が、2017年に新書版で復刻してくれました。難解な思想史であり、仮名遣いも慣れたものではないが、なんとか読み終えました。「Gゼロの世界」となった今、大東亜共栄圏への道は勉強しておいてもいいと思います。