1980年発表の本書は、スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの<スマイリー三部作>の完結編。デビュー作「死者にかかってきた電話」以降、作者の作品によく登場した中年スパイであるジョージ・スマイリーが、ついに宿敵カーラとの決着を付ける。
三部作第一作で、英国情報部<サーカス>は大きな痛手を受けた。第二作ではアジアを舞台に現場復帰させられたスマイリーの指揮下で、なんとかソ連情報部カーラの陰謀を阻止できた。そして再び引退したスマイリーを、三たび現場に呼び戻す事件が起きる。
ソ連は自国を捨てて亡命した人物と、国内に残った子供を再び逢わせる人道的なストーリーを描いた。選ばれた一人が、パリで暮らすマリアという老婆。娘アレクサンドラと逢えるというのだが、陰謀の匂いを嗅いだ彼女は英国にいる亡命ロシア人のリーダー「将軍」に助けを求めた。

彼は<サーカス>の協力者でもあり、独自の諜報網を持っていた。マリアの件に端を発した調査の結果、「スマイリーに伝えてくれ。サンドマンの件で証拠を2つ掴んだ」と連絡してきた。しかしスマイリーは引退していて、連絡に手間取るうち、「将軍」は殺されてしまった。2つの証拠と言うものも発見されない。サンドマンとはソ連諜報部の長カーラの暗号名だった。
スマイリーはかつての仲間たちに会って、最近の「将軍」の動きからカギはハンブルグにあることを知る。そこには「将軍」の仲間たちがいたのだが、右腕だった男も殺されてしまった。カーラの西側工作を仲介しているスイス在勤のソ連参事官グレゴリーエフを捕らえたスマイリーは、彼に陰謀のすべてを吐かせるように仕向けるのだが・・・。そして彼だけがカーラの弱点、娘のタチアーナに繋がる道なのだ。
長い長い戦いの末、スマイリーは「きみの勝ちだ」と言われ「そうかもしれない」と短く答えます。<サーカス>を監視するため、英国政府は第三者機関を強化しようとします。これにベテランの諜報員は「口ばかり達者の左傾化した連中だ」と反発します。冷戦後、再び物騒になった今の国際社会で、似たようなことを言っているスパイが大勢いるように思いました。