新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

州執行長官との人質交換

 1984年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第九作。以前から不穏な動きを見せていた北部チェスターのレイトン伯らが叛旗を翻し、スティーブン王は苦境に陥る。王に忠誠を誓っていたシュルーズベリも軍勢を繰り出す(*1)のだが、州執行長官のプレストコートがウェールズ軍の裏切りもあって敵軍に捕獲されてしまった。

 

 カドフェルの親友で州執行副長官のヒューは何とか戻ったのだが、カドフェルも彼の体制立て直しに奔走することになる。ところが修道院には、ウェールズの領主オエインの縁につながる貴族青年イリスが捕虜となって連れてこられた。当初英語が分からないふりをしていたイリスは、カドフェルにそれを見破られ素直な捕虜になった。彼は故郷に親の決めた許婚者クリスチナがいると言うが、プレストコートの娘メリセントに一目ぼれしてしまう。

 

        

 

 イリスの身元が確認できたヒューは、プレストコートと彼の捕虜交換を考える。この話をまとめるため、出身地のウェールズカドフェルは赴いた。オエインはカドフェルを紳士的に迎え、プレストコートは重傷を負ったが生きているという。イリスとの交換は合意され、オエインは親衛隊長とイリスの従兄弟イリアドに護衛させてプレストコートをシュールズベリに返してきた。

 

 しかし修道院で治療を受けていたプレストコートを、何者かが殺害した。交換で帰りたくないイリスが第一容疑者になり、彼と離れがたくなっていたメリセントのこともあって、カドフェルは犯人探しを始める。死体の鼻などから、窒息させるのに使った布の繊維を見つけるところは、科学捜査(CSI?)っぽい。結末近く、ヒューが「罪は罪」というのに対し、カドフェルは「盗みにも程度がある。ウェールズ法は処罰にも差をつける」という。ウェールズでは情状酌量が認められていたようだ。

 

 ある意味父親の仇のイリスと恋に落ちたメリセントや、イリスの許婚者クリスチナの感情など、やはり「愛」の物語でしたね。「無政府時代」の英国史を学びながらのミステリー、気軽に読めて嬉しいです。

 

*1:第一次リンカーンの戦い