1929年発表の本書は、F・W・クロフツの<フレンチ警部もの>。1920年「樽」でデビューした作者は、レギュラー探偵フレンチ警部を得て、安定した本格ミステリーを毎年発表するようになっていた。この年には米国でエラリー・クイーンもデビューし天才探偵が増える中、地道に一歩一歩犯人を追い詰めるフレンチ警部は読者を獲得していった。
書類仕事(*1)をしていた警部に、知り合いの弁護士から協力要請の電話が入る。映画館の切符販売をしている娘サーザは、命を狙われていると訴えた。
・ギャンブル(詐欺)に巻き込まれて借金を作ってしまった
・いうことを聞けと脅されるが、売春や強制労働ではない
・黒幕は手首に「紫の鎌に似た傷」を持った男
・知り合いの販売員アイリーンも、そんな傷の男に脅されたらしい
・アイリーンは自殺したと言われているが、殺人だと思う

「調べてみよう」と彼女を帰して警察内の手配をした警部だったが、後日サーザが水死体となって発見されたと知らされる。海での溺死だったのだが、警部の示唆で司法解剖すると肺からは真水が出て、殺人の疑いが濃くなった。さらにもう一人の切符販売員の死も確認できた。犯人(グループ?)はなぜ同じ仕事の女性たちばかり狙うのか?
警部は別の3人の販売員の娘をリストアップし、部下を動員して尾行を始める。その結果、モリーという娘から「切符販売で受け取る半クラウン硬貨のすり替えをさせられている」との情報をつかんだ。事件は殺人に加えて、大規模な通貨偽造事件に発展する。
フレンチ警部は、これまでの作品でも時々部下を駆使して事件を追います。その傾向が本書で比重が増していて、最後は2台の車に分乗した5人の部下とモリー救出に向かいます。これはもう初期の警察小説ですね。
*1:エラリーやファイロ・ヴァンスがこんなことするわけがない