2025年発表の本書は、1982年生まれの戦争研究者2人の対談本。ロシアの専門家で戦争オタク系の小泉悠氏と、マッチョ系で東京国際大学の安全保障研究者山口亮氏である。オーストラリアで育った山口氏は、ベトナム戦争・湾岸戦争など多くの実戦に関わってきた同国の視点で日本を観ている。
前半は戦史や先端技術を巡る会話。
・本当の軍事力は測れず、ランキングはあてにならない
・兵や装備の量は測れても、質は測れない
・本当の軍事力とは、構造的な即応力と運用の即応力
・ロシアはウクライナ軍の能力を見くびって、短期決戦に失敗
・しかし(古い戦車を引っ張り出すなど)予備力はあって、戦い続けている
・C4ISR(*1)によって現代の戦場は、格段に合理的になった
・核兵器も十分な兵站や予備もない日本は、交戦のレベルをずらすべし
・サイバー空間での戦争は、平時と有事の境目が分からない
・LAWSはじめAIが戦場に投入されているが、戦争を始めるのは人間

それらを前提に、2030年日本が巻き込まれる可能性のある戦争シナリオが紹介されていた。
1)中国による台湾の海上封鎖
中国は平和統一を掲げていて、武力統一に直接訴える可能性は高くない(*2)。サイバー攻撃での人心かく乱やインフラ停止、さらに海上封鎖をしてくることは考えられる。この時、米軍の対処が問題。米中相撃つになれば、日本は必然的に巻き込まれる。
2)朝鮮半島有事
北朝鮮は平和統一は諦め、武力統一を掲げている。しかし即応力も兵站も十分ではなく、仮に米軍が撤退しても韓国占領は難しい。しかし精度は悪いが大威力の核ミサイルは持っていて、日本も迎撃に失敗すれば大惨事になる。
3)ロシアの侵略
着上陸能力が低く、攻めてくる可能性は高くない。しかし欧州方面に米軍が戦力をシフトした場合の奇襲はあり得る。
これらに対し日本ができることは、まずグレーゾーン事態への対処能力を戦力的にも法制的にも強化すること。武装漁民の尖閣上陸やサイバー攻撃によるインフラ障害など、どこまでが有事と見るか、警察権はどこから発動か、どうなったら自衛隊が受け持つのか決めること。さらにグレーな事態を、どう国内外に広報するかの能力が重要になる。
米国が信用できなくなった時の議論もありました。そのあたりは直接お伺いしたいですね。
*1:指揮・統制・通信・計算機・情報・監視・偵察
*2:しかし中国軍の「知能化戦争」や核戦力の強化、特に海上での通常戦力増強は脅威