本書は、以前第三集「クリスマスの朝に」を紹介した、マージェリー・アリンガムの「アルバート・キャンピオン氏の事件簿」の第二集。第一集「窓辺の老人」はまだ入手できていない。作者はクリスティのライバルとも考えられた、英国女流ミステリー作家。彼女が創造した名探偵は、黄色い髪、痩身、角ぶち眼鏡で青白い顔の男キャンピオン。おそらくは貴族階層の出身で、妻のアマンダとセッター犬ポインズと暮らしている。1900年生まれで、実世界と同期して年を取っていく。本書の作中ではおおむね30歳代後半である。
クリスティの両探偵(ポワロとマープル)にロマンスの香りはないが、キャンピオンはロマンスや冒険、スパイっぽい話も含めて、広範囲に活躍するキャラクターである。

本書には、長さもテーマもまちまちな11編が収められている。ショート・ショートともいえるものもある。そのうちの1編「見えないドア」は、不可能犯罪もの。一つの入り口以外は厳重に施錠された建物で、男が絞殺されていた。入り口には2人の男がいて、被害者以外は誰も出入りしていないという。ロンドン警視庁のオーツ警視に呼び出されたキャンピオンは「見えないドアがあるのです」と言って、鮮やかな解決を示す。
表題作「幻の屋敷」では、キャンピオンは口うるさい大叔母の屋敷に呼び出される。2週間ほど旅行していた彼女は、留守のうちに誰かが屋敷に入ったが訴えても警察が取り合ってくれないというのだ。大叔母によると「何も盗られていないが、書斎で誰かが手紙を書いた」とのこと。不思議な状況にキャンピオンが挑む。
短い作品だとキャンピオンが最初から登場し、鮮やかな解決を見せる。少し長めの作品では、キャンピオンは単なる聞き役や脇役で終わることもある。これは作者がバリエーション豊かな作品群を産み出すため、でもキャンピオンは使うという書き方をしたからでしょう。それだけ愛着あるキャラだったのですね。