本書は、以前「上級国民・下級国民」を紹介した橘玲氏の心理学的人間の行動分析。<週刊新潮>に2021~2022年に連載された「人間、この不都合な生き物」を、加筆修正して書籍化したものだ。前著は社会課題について「言ってはいけないこと」としてまとめたものだが、本書で追及しているのは社会を構成している人間自身。
生存が危うい環境で生き延び進化してきた人類は、最も発達した器官である脳にいくつかの機能を残している。
・自己正当化が大目標なので、それに近づくとドーパミンが出る
・そのためには、時間をかけるなどして記憶を歪めることもある
・危険を察知すると、大きな警告音を鳴らして身体に対処を求める
・同じ仲間の間では、優位に立とうとしてマウンティングをしたがる

こんな人類だから、社会的生物として表面は取り繕っても、自分でも気づかないうちに「不都合な」思考・行動をする可能性がある。例えば、お金持ちはルールを守らない比率が善良な庶民より高い(*1)。貧乏なうちは共同生活で支え合う必要があってルールは厳密に守るのだが、独自で生きていけるようになると共同のためのルールはうるさく思えて無視しがち。あるいは、カネで解決(*2)しようとする。環境問題などで「いいことをした」と感じたら、少しぐらい悪いことをしてもいいと思ってしまう。
また、現代の社会的能力が高い人は、総じて自己の能力査定が辛い。一方能力が低い人は査定が甘く、結果として「自意識下の能力」は中央値に近くなり、場合によっては逆転する。こんな人たちが議論するものだから、能力の低い人たちの意見が通りやすく(*3)なってしまう。能力が低いことを具体的に言うと、
・先進国の成人の約半分は簡単な文章が読めない
・数学的にも、約半分が小学校レベル
・PCを使ってちゃんと仕事ができるのは5%
だとある。多くの心理学的データを交えた分析でしたが、結論は見えにくいですね。どうすべきか?との主張は、結局分かりませんでした。
*1:例として、自動車の運転時に一時停止を守る率
*2:交通違反の罰金は、ルールを破る権利金
*3:ポピュリズムの原因のようだ