新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

古書店好きのミステリーマニアに

 1979年発表の本書は、久しぶりに見つけた才人ローレンス・ブロックの<泥棒探偵バーニイもの>の第三作。デビュー作「泥棒は選べない*1」を紹介したが、第二作はまだ見つけていない。

 

 バーニイ・ローデンバーは、池波正太郎流にいえば「ひとりばたらきの盗人」。江戸ならぬ大都会、ニューヨークを縄張りにしている。ブロードウェイ近くに古書店を開いて、これをカバーにしている。古書好きでもあり、警官が冷やかして帰った後店を閉めて向かった先は、愛書狂の自宅。

 

 足は盗んだ車、ガソリンが切れそうになって焦るシーンもあるが、十分下見した現場は手慣れたもの。警報装置を切り、錠を開け、閂を弓ノコで切って侵入する。コインや金、通帳などには目もくれず、1冊の本だけいただいて帰る。

 

        

 

 この本は、詩人キプリングが出版後気に入らないとして、ほとんどを廃棄してしまった「バックロウ砦の解放」。世界に1冊だけしか残っていない。実はバーニイは自分の正体を見破ったウェルキンという男に15,000ドルで雇われて盗む羽目になったのだ。しかしウェルキンにその書籍を渡す前に、銃を持ったインド人が店に押し入った。

 

 そこは偽物をつかませてしのいだバーニイだが、ウェルキンの友人という女マドリンに薬を飲まされ眠り込んでしまった。目を覚ますと書籍を奪われた上に、マドリンが射殺されていて手には凶器の銃が握らされていた。何とかにげだしたものの罠に嵌められたバーニイは、すぐに指名手配される。しかし彼は知り合いのキャロリンのところに潜伏して、逆に真犯人に罠を掛けることにした。

 

 キャロリンは身長5フィートと小柄なレズビアン、バーニイを自分のベッドに寝かせ「心配しないで」と自分はソファで眠る。2匹の猫も一緒になって、2人の軽快なやり取りの中事件はゴールに向かって走り出す。

 

 アル中無免許探偵マット・スカダーとはまるきり雰囲気の違う、明るい軽ハードボイルドです。最後に関係者を集めてバーニイがなぞ解きをするところは、本格ミステリーのようでもあり、愛書狂の一面も見せるバーニイが可愛いです。あと2冊、探しているのですが・・・。

 

*1:泥棒探偵バーニイ登場 - 新城彰の本棚