1952年発表の本書は、これまで「愚か者の祈り」などの警察小説を紹介してきたヒラリー・ウォーのデビュー作。本格ミステリーではわき役だった警官の組織的な捜査をち密に描き、近代警察小説の嚆矢となった記念作品である。
マサチューセッツ州ボストンの大学で、美しい1年生ローウェルが失踪した。人目を惹く美人だが、身持ちのいい娘と皆が認めていたのだが、体調が悪いと寮に戻った後着替えて出かけたらしい。翌日フィラデルフィアから父親が駆け付け、警察に届けた。
ブリストル警察のフォード署長は隠密裏に調査しようとするのだが、メディアが嗅ぎつけて新聞紙面を賑わし始める。一番の手がかりは、彼女が残した日記。寮仲間や教員、大学職員などとの交流のほか、デートしたことのある他大学の男子学生数名の名前も分かった。捜査にあたるキャメロン巡査部長は、ローウェルが妊娠してしまいモグリ医者の所で堕胎しているのではと疑う。

怪しいと思われる医師を見張らせる一方、キャメロンは関係者を尋問してローウェルとの関係を聞き糺す。近くの池の水を抜いてみたのだが、手掛かりは得られない。しかし別の水系で彼女のものらしい装身具が見つかり、付近の水辺を捜索したところ彼女の死体が見つかった。首の骨が折れていて水師ではない。やはり妊娠していた。
フォード署長以下の地道な捜査で、容疑者は絞られていく。有力な容疑者が浮かんだのだが、直接証拠はない。捜査陣はニューヨークの警察にも協力を求め、ローウェルと容疑者が、密会していた証拠をつかもうとする。
高卒たたき上げのフォード署長と、若手のキャメロン巡査部長のやりとりが楽しい。レジナルド・ヒルの<ダルジール&パスコーもの>のような組み合わせで、どちらも自説には自信を持っている。
科学捜査(胎児のDNAどころか血液型の記述もない)能力が十分でなく、指紋・筆跡・目撃証言くらいしか使えません。それでも執念の捜査が、真犯人を追い詰めるプロセスは迫力十分でした。近代警察小説のスキームを作った作品であることは間違いないでしょう。