新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

独立、脱植民地、開発そして民主化

 2008年発表の本書は、アジア近代史の著書が多い元NHK記者宮城大蔵氏の、インドネシア周辺の戦後史。旧宗主国のオランダやマレーシア等を支配していた英国、ベトナム戦争に介入した米国に加え、一時期占領統治した日本が、戦後どのようにこの地域の政治に関わったかをまとめたもの。

 

 インドネシアは、東南アジア全体の半分程度の面積を持つ大国。オランダの植民地だったが太平洋戦争で日本軍が占領、オランダを追い出した。戦後独立を果たすのだが、いくつも問題を抱えていた。

 

・政治的に独立しても、産業の大半はオランダ資本の支配下にある。

・人口の7割はジャワ島に居住。外貨を稼げる資源は他の島にある。

・独立の英雄スカルノ大統領の政治基盤は、陸軍と共産党という不安定さ。

 

 脱植民地としてオランダ資本を追い出したのだが、どの国に援助を求めるかが課題。隣国マレーシアとは領土紛争をしており、これを支援している英国はNG。共産党が政治基盤にいるということで、米国も本腰は入らない。東欧やソ連は援助を申し出るが、これは第二の植民地化への道だ。

 

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 そこに戦後賠償と言う形でおカネを運んできた日本が、消去法で浮かび上がった。当初は日本が申し出た賠償金額が、インドネシア側の希望とかけ離れ(2ケタ違う)ていたが、日本が高度成長を迎えるとその差が徐々に縮まっていた。

 

 各国がインドネシア支援に乗り出せない中、1963年に当時の池田首相がインドネシアとマレーシアの紛争の仲介を申し出る。英国は難色を示すものの米国は黙認することにした。このように、日本の「南進」が経済的に進んで行き、いくつかの国の「脱植民地化」に寄与したと筆者は言う。

 

 当時西側諸国の懸念だったのが、ドミノ倒し的に進む共産化。南ベトナムが崩壊し、インドネシアらも共産化の危険があった。しかしスカルノを支えていた陸軍と共産党が衝突し、陸軍が共産党を駆逐した。その一方、米国と中国が国交を回復する「ニクソン・ショック」が来て、日本でも田中政権が誕生しインドネシアが望まなかった日中国交正常化が成った。

 

 本当に民主化までできたかは不透明ですが、インドネシアなど東南アジアの戦後政治、なんとなく今の国際環境にも似ているような気もします。歴史を知っておくことは、今後の東南アジア情勢をみるにも役に立つと思いました。