2023年発表の本書は、中東調査会研究主幹青木健太氏の<アフガニスタンの今>。アケメネス朝ペルシア(前6世紀)から、アレクサンダー大王の東征など幾多の歴史に登場する「文明の十字路」なのだが、反面「帝国の墓場*1」とも呼ばれるのがこの地。
1973年ザーヒル・シャー国王の統治がクーデターで終わり、以降50年間内戦が続いている。そんな中台頭してきたのが、指導者ウマルが1994年に創始したタリバン(*2)。イスラム原理主義勢力だが、もともとは他の勢力から市民を守るための組織だ。2022年バイデン政権が米軍の撤退を決めると、あっという間にガニ政権を倒しカブール(*2)を奪還した。現在ほとんどの地域を実効支配している。

タリバンは不文法であるシャリーアを統治の基本としている(*3)が、全人口の42%を占めるパシュトゥーン人が中心でもあってこの民族の慣習法も影響力がある。いずれにせよ女性の教育や就労は禁止、外出にも男性の許可やエスコートが必要だ。民族を問わず、
・ウチとソトには厳しい差がある
・政府は全く信用されていない
・外部からの干渉には激怒する
のが国民性。もともと対外援助がなくては生きていけない国なのに、タリバン暫定政権を承認した国はない。経済環境は非常に厳しい。それゆえ国外への脱出を図る人も多く、200万人ほどが難民となって流出した。最大の受け入れ国パキスタンには、130万人を越える難民がいて、受け入れ国の負担になっている。
最後に日本へのアドバイスがあって「米国のように自分流を押し付けず、かの国にあった手法や制度設計で助けていくこと」とありました。2019年に銃撃されて亡くなった中村哲医師のように「現地の人がメンテできる水道」を援助することが重要とのことでした。
*1:大英帝国も、ソ連も、今回アメリカも、この地に手を出して衰勢に陥っている
*2:発音は「ターリバーン」「カーブル」が正しいが、ここでは周知の表記とした