2012年発表の本書は、京都大学出身のミステリー作家岡崎琢磨のデビュー作。第10回「このミス大賞」隠し玉賞受賞作である。舞台は京都、青年アオヤマ君が本格喫茶<タレーラン>で出会う美星という名のバリスタと、日常的な小さな事件の数々を描いたものだ。まさに、現代・京都・青春「Cozy Mystery」である。
<タレーラン>は富小路二条の交差点に近く、狭いくぐり戸を通らないと入れない隠れ家喫茶店。小柄で華奢な娘美星が学生時代にアルバイトをしていて、店主の急逝を受けて引き継いだ店だ。アオヤマ君はここで、理想のコーヒーに出会う。
京都の四季や時折々のイベント(送り火・葵祭・祇園祭・時代祭りなど)を背景に、喫茶店で起きる小さな事件に、バリスタ美星が推理の冴えを見せる。そこにアオヤマ君やその友人が巻き込まれる、恋のトラブルが重なり青春物語を構成している。随所に「京女の強さ」も見せてくれる。

長さ40~50ページの短編7編が収められていて、ちょい役で登場した人物が後の物語の中心になることもある連作短編集である。死体どころか、血も流れることはない。コーヒーに関する知識もふんだんに取り入れられていて、登場人物の名前もコーヒーにちなんだもの(*1)だ。
「盤上のチェイス」は、碁盤の目に仕切られた洛中の構造(縦横の通りの名前)を知らないと、実感が湧かない。元カノと河原町三条で別れた後、アオヤマ君は<タレーラン>に逃げ込んだ。ところが、元カノは知らないはずのこの店に直ぐに追いかけてきた。烏丸二条から見えるとか、裁判所バス停からはとか、地理を知らないと意味の分からない推理が続く。
雰囲気としては「ビブリア古書堂の事件簿*2」に近い。気楽に読める青春ミステリーですが、続編が一杯出ているらしい。「ビブリア・・・」同様、最後まで読み切れるか自信はありませんね。
*1:アオヤマ君もブルーマウンテンである