新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

偏屈な発明家が遺した栄誉

 今日12月10日は、ダイナマイトの発明で巨万の富を築いたアルフレッド・ノーベルの命日。偏屈者だった彼の遺産を使って贈られるのが、世界的に権威あるノーベル賞である。2017年発表の本書は、共同通信ロンドン支局の記者たちが取材した、ノーベル賞の舞台裏レポート。

 

 以下の各賞があるのだが、本書の章立てを見るだけで、取材の意図が見えてくる。

 

文学賞 誰が評価するのか?評価できるのか?

・物理、化学、医学生理学賞 発見と発明の熾烈な競争

・平和賞 政治への影響とあやふやな理想

・経済学賞 批判が尽きない理由

 

        

 

 審査は厳正に行われるというが、文学賞の場合はスウェーデン語への翻訳の出来が影響するらしい。ほば半分の受賞者が、英語・仏語・独語で書いているのも事実。科学系は文学よりは客観性ある審査ができるが、それでもロビーイングが効果を上げることはある。国の技術力の指標とも考えられるからだ。

 

 平和賞(*1)になると、もっと国への影響が大きくなる。なぜか中国人で受賞した人は、3人共国外に逃れて共産党政権を批判した人だった。また米国オバマ大統領の受賞に当たっては、残りの任期の外交や軍事が縛られるとして側近たちはノーベル財団を非難した。

 

 最後に経済学賞は、ノーベルの遺言にはなく1969年に新設され、新自由主義者に偏る傾向があると批判されている。加えて、破綻し世界不況を引き起こしたヘッジファンド創始者が名を連ねるなど「賞」に値するかとの議論もある。

 

 受賞者には800~1,000万クローナ(*2)とメダルが授与される。かつてメダルは純金だったが、今は金メッキである。メダルがオークションにかかったこともあり、その時の落札価格は75万ドルだった。

 

 純粋に賞を祝うことが難しい、政治的なものになったということでしょうか?日本人の受賞を数えているだけではダメなようです。

 

*1:要件は、諸国間の友好・常備軍の廃止もしくは削減・平和会議の開催や推進の3つ

*2:遺産の運用益が原資なので、運用によって上下する。現在1クローナは約15円