1986年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第13作。かつてシュルーズベリの門前通りに服地の店を出していたジュディスは、夫を病で亡くし自らも流産して一人になった。資産家でもある21歳の彼女は、店を修道院に貸与して自らは隠棲生活に入った。修道院からは毎年、庭の白バラの樹から1輪の花をもらう契約をして・・・。
4年経ち、彼女は夫の治療をしてくれたカドフェルに、尼僧院に入りたいという。カドフェルは「まだ若い君は、新しい幸せを探すべきだ」と諭す。この春は到来が遅く、多くの作物同様バラの開花も遅れていた。それでも修道院からバラが送られる約束の日が近づくと、何とか咲いてくれた。ところが当日、バラの樹は傷つけられ世話をしていた修道士エルーリックが死体となって発見された。

修道士の死も問題だが、修道院としてはバラの花を期日までに届けられなければ、契約違反になってしまう。ジュディスは「花がなくても契約は続行」の意向だったが、それを明示するまでに何者かに誘拐されてしまう。カドフェルは、州の執行長官ヒューと修道士殺しを捜査するだけでなく、ラドルファス院長の命で行方不明のジュディスを探すことになった。
富裕な未亡人ジュディスには、言い寄る男が複数いた。財産の半分を修道院にほぼ無償で貸していても、彼女には十分な資産がある。しかし誰かが、その資産を倍にしてからジュディスと結婚しようとしていたら・・・。疑惑はその男たちに掛かるのだが、そのうちの一人で彼女の捜索にあたっていた青年が、セヴァーン川で溺れて死んでいた。泳ぎは得意だった彼だが、頭部には2つの打撃を受けた跡があった。
レギュラーメンバーと言っていい、尼僧院のシスター・マクダレンや、川を知り尽くしたマドッグ船長らも登場し、カドフェルの科学捜査(*1)も冴えます。巻頭に簡単な地図があり、縮尺がないのが玉に瑕ですが、事件の推移を地図で確認もできました。このシリーズ、手軽に読める歴史社会派ミステリーですね。
*1:簡単な検視や、足跡の型をロウでとるなど