新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

冷戦終結、スパイたちの運命

 1991年発表の本書は、フレデリック・フォーサイスのエスピオナージ。「騙し屋4部作」の第1作で、ずっと探していたものだ。第2~4作はすでに本棚にあるので、今月から毎月1冊紹介していきたい。

 

 サム・マクレディは英国秘密情報部SIS(*1)のベテラン諜報員。「騙し屋」とあだ名される凄腕だが、冷戦終結で立場が危うくなる。いかに実績を挙げ、世界中にネットワークを持っていようとも、スパイそのものが要らなくなったのだから。

 

 英国外務省事務次官のロバート卿は、冷戦が終わって情報部の縮小を考えていた。SIS長官ら関係者(彼らも全部卿)を呼び、そのやり方を伝えた。それは、象徴的な人物を早期退職に追い込んで、内外にその意思を示すこと。目標に選ばれたのが、まだ51歳で停年に間があるマクレディだった。

 

        

 

 一応「部長」の肩書は付いているのだが、どう見ても閑職への左遷である3つの選択肢を見せられて、マクレディは聴聞会を要求する。ロバート卿らは彼が4つ目の選択肢としておとなしく引退することを望んだのだが、マクレディは公開の場での抵抗を試みた。以降は、1980年代にマクレディが大仕掛けをしてソ連の大物をスパイに使った話になっていく。

 

 暗号名<スモレンスク>は、ソ連中枢の情報提供者。カリフォルニアで家族と暮らしたい(陽光が嬉しい!)と、アパート1棟全部を報酬として要求する。棲むだけでなく、家賃収入も入るからだ。SISではそんな報酬は出せないと、マクレディはカネのあるCIAを巻き込んで<スモレンスク>の要求を呑もうとする。

 

 彼はソ連軍の戦闘序列マニュアルを入手、これを渡すと言ってきた。西ドイツの諜報機関はこれを受け取るため要員を東に派遣するのだが、彼は出発前に高級娼婦を殺す羽目に陥っていた。マニュアルを入手したものの現地で進退窮まった彼に対し、マクレディは単身東ドイツに潜入するのだが・・・。

 

 地味ながら迫力のある250ページでした。聴聞会の件が解決していないので、残り3作まで続いていく話だと思います。手早く読めたのが嬉しかったです。

 

*1:俗にMI-6と言われることもあるが、こちらが正式名称