2025年発表の本書は、ドイツ現代史が専門の歴史作家大木毅氏(*1)の「太平洋戦争の検証」。すでに多くの歴史家が取り上げたテーマだが、僕より若い世代が「戦略・作戦・戦術」を立体的に検証したというので読んでみた。多くの検証が、
・戦略面 例:なぜ米英と戦った?英蘭だけでよかったのでは
・戦術面 例:46cm主砲は役に立ったか?1,000馬力級の航空エンジンでは戦えない
のどちらかに寄っていると筆者は考え、その中間の作戦面にも光を当てた三次元的な分析をしたかったと前書きにある。戦争の経緯は良く知られたもので、特に目新しい何かはない。作戦面という意味で、日本軍の行動は、
◇フィリピン攻略戦
マニラ攻略を優先し米比軍を取り逃がしたという批判はあるものの、昭和天皇もほめた(*2)というち密な作戦で短期間に完遂した。

英軍の意表を突き、陸海空協力による新戦術をもって、難攻不落の要塞を短期間で降伏させた。
を評価する一方、中盤以降は、
◆ニューギニア作戦
攻勢限界点を越えたポートモレスビーを、フィジー・サモア攻略などを並んで奪取しようとし敗れた。
◆ガダルカナル攻防戦
ミッドウェイ作戦同様、敵の陸上部隊と艦隊の双方を目標としたり、補給を軽視していたずらに犠牲を増やした。
◆フィリピン防衛戦
米軍にも陸軍と海軍の対立があったが、空母機動部隊を囮に使う奇策を用いたのち主目標の輸送船団ではなく敵艦隊に目を奪われた。
結論から言うと、作戦面に注目したのはいいが、その評価点や問題点を詳述するには、この短い紙幅では難しかったと思われる。ここに挙げた各作戦(数ヵ月から1年に及ぶキャンペーンもある)をちゃんと分析すれば、1冊の新書になったろう。原稿が<歴史街道>に掲載されたもので、それを1冊にまとめたのでは帯にあるような「再検証」に届かなかったのは当然かもしれません。