新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

PFLP-GC議長への復讐劇

 1992年発表の本書は、冒険小説10冊ほどを執筆した匿名作家A・J・クィネルの軍事スリラー。正体を明かさない理由は「取材の自由を確保するため」だという。確かに本書では実際の事件(*1)を扱い、その首謀者をPFLP-GC(*2)議長と決めつけているのだから、創作中のこととはいえリスクはあるだろう。

 

 元傭兵のクリーシィはマルタで平和に暮らしていたが、妻子がパンナム103便に乗っていて事件の犠牲になった。機体の不具合説もあったのだが、米国ミサイルがイラン航空を誤射して撃墜したことの復讐で、PFLP-GCによる爆破の公算が高まった。クリーシィは同じく妻を殺された上院議員の協力を得て、復讐をすることにした。17歳になるアラブ系の孤児マイケルを養子とし、右腕の役割をする暗殺者に仕立てていく。世間を欺くため、女優レオーニと結婚もした。

 

        

 

 クリーシィはマイケルに対し、水泳やマラソンで基礎体力を付けさせたうえ実戦教育をする。まず警察の教習所で銃や格闘を習わせ、島のはずれで原始的な生活をさせ、グルカ兵から狙撃を仕込んでもらう。訓練中に事故で重傷を負った時でも、一切甘えは許さない。

 

 一方PFLPジブリGC議長も、自分を狙う勢力の存在に気付いた。ジブリルは正体の分からないクリーシィについて聞きだすため、上院議員の誘拐を企む。クリーシィは元傭兵仲間を上院議員の護衛に就けるが、ジブリルはシカゴのギャングであるモレッティ兄弟に依頼して1ダースほどの兵士を送りこんできた。

 

 全編を流れる「死線をくぐってきた」元傭兵たちの言動がカッコいいです。諜報・防諜・武器の調達等々、プロの匂いが充満しています。ダマスカス郊外のPFLPキャンプに籠ったジブリルを襲撃するシーンも相当なものでした。初めて読んだ作者ですが、他の作品も読みたいです。

 

*1:1988年12月21日、パンナム103便B-747機がスコットランドの村に墜落、乗員乗客258名と村人15名が犠牲になった。

*2:パレスチナ解放人民戦線総司令部派