2017年書下ろしの本書は、京都を舞台にしたいくつかのミステリーもの(*1)を手掛ける仲町六絵の連作短編集。京都西陣にある「なごみ植物店」の店員和久井実菜が、「植物の探偵」として植物たちの謎を解き明かす。
神苗健は京都府立植物園(*2)の新米職員、大学の史学部を出て植物園に採用された。イベント企画などをしたいと希望一杯で入園して、春の女神かと思う女性に出会う。彼女は長い黒髪と優雅な身のこなしで、植物園内を歩いていた。
神苗は、入園者の母娘連れから「逆さまに咲くチューリップはありますか?」との質問に戸惑った。幼稚園児の娘は、旅行で黄色く下向きに咲くチューリップを見たという。戸惑う彼に助け舟を出してくれたのが、春の女神こと和久井実菜。西陣にある「なごみ植物店」の店員で、業界では有名人らしい。

彼女は母娘連れに探してみると約束し、数日後見つけたとの連絡をくれた。神苗も誘われて「なごみ植物店」にいってみると、実菜の姉の花弥が店長をしている花屋だった。姉妹の両親は、世界を股にかけたプラントハンター夫婦だった。実菜は探偵事務所と呼ぶ研究室に母娘や神苗を案内し、「逆さに咲くチューリップ」の写真を示して謎を解いた。その後神苗は、姉妹から「有力な(植物の探偵)助手候補ね」と評価され、時々晩ごはんもごちそうになる仲になる。
続いて神苗の前に提示される謎は、
・織田信長にゆかりの食材で菓子を作りたい
・さそり座の星と短歌に詠まれた白い花って何
・紫式部が「白いバラ」と呼んだ花の正体は
・蛍が集まる草を探すように言われたのだけど
・桜を材料に茜色の染め物を作りたい
というもの。馴染みの京都の名所や、グルメの作り方も含めた紹介がふんだんに詰まった楽しいミステリー集です。雰囲気は「珈琲店タレーランの事件簿*3」に近いです。ユーモアたっぷりで血が流れず、次の旅行の参考にもなる、お得な書でしたよ。
*1:「からくさ図書館来客簿」「あやかしとおばんざい」シリーズなどの作品がある