1990年発表の本書は、以前短篇集「謎解きはディナーの後で」を紹介した、ジェームズ・ヤッフェの<ママシリーズ>。珠玉の安楽椅子探偵ものだったが、後年このユダヤ人一家は、ブロンクスからロッキー山脈の麓、メサグランデの街に移ってきた。NYPDで警視に昇進したデイヴだったが、妻シャーリーを亡くし警察も辞めて、メサグランデの公選弁護人アン・スウェンソンの事務所で主任捜査官の職を得た。
ママも、息子を追ってメサグランデで新しい暮らしを始めている。本書は<メサグランデのママ>シリーズの第二作である。以前同様、デイヴはよくママにディナーを食べさせてもらい、その食卓で事件の概要を話して、ママが真相を言い当てるのだ。

かつてはKKK団以上の人種差別主義者がはびこっていたというこの街、多くのキリスト教会があってユダヤ教徒は肩身が狭い。公選弁護人のアン達も、ユダヤ教徒への圧力に関わることが多い。
この日も隣家の牧師の家で派手なクリスマス騒ぎがあり、抗議したユダヤ教徒の青年ロジャーが訴えられるという事件が舞い込んだ。この教会<栄光眩しき使途教会>のキャンディー牧師一家は、このクリスマスに何故か大きな騒ぎを始めたのだ。
教会周辺の戸建てが買収されていて、残るはロジャーと両親の家だけ。デイヴは土地買い占めが起きていて、ロジャー達が追い出されようとしていると考える。しかしクリスマスイブの夜、牧師が射殺されロジャーが指名手配されてしまった。デイヴとアンはロジャーを探す一方、事件の真相を探り始める。
作者の長編を読んだのは初めて、EQMMの常連で本格ミステリーとして名高い作品と聞いていたが、その評判は伊達ではなかった。短編では、ママがあっと言わせて終わる物語が、長編だと二重三重のどんでん返しが仕掛けてあって、読者は何度も驚かされる。このシリーズ、キリスト教・ユダヤ教の違いなど分からないと難しい部分もあるのですが、素晴らしい本格ミステリーです。あと1冊買ってありますが、もっと探しますよ。