新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

戦争未亡人ジェーンのエジプト旅行

 2020年発表の本書は、米陸軍やメリーランド州警察に勤めた後、本書でデビューしたエリカ・ルース・ノイバウアーの本格ミステリー。アガサ賞最優秀新人賞を受賞した作品である。

 

 舞台はWWⅠ後1926年のエジプト。22歳で結婚した夫を戦争で亡くし、未亡人暮らしをしているジェーンは、叔母ミリーの休暇に付き合ってギザの名門ホテル<メナハウス>に到着した。叔母は部屋に入る前にまずバーで「本物のハイボール」を呷っている。米国の禁酒法も、ここまでは追いかけてこない。ジェーンの旅のお供はクリスティの「茶色の服を着た男」。それでもカクテル一杯は付き合った。

 

 まずジェーンは、銀行家と名乗る格好いい男レドヴァースと知り合うが、同時に知り合ったスティントン大佐の娘アンナが、レドヴァーズを独占しようとして意地悪をしてくる。ところが、ある朝アンナが起きてこないという大佐の求めで、ジェーンがアンナの部屋に入ると、彼女は射殺されていた。

 

        

 

 第一容疑者となったジェーンは地元警察に「ホテルを出てはいけない」と言われ、観光に行けずにがっかり。彼女を横目で見ながらミリー叔母は、昼間はゴルフ夕方からはお酒三昧。自らの潔白を示すためにも独自捜査を開始するジェーンに、レドヴァーズが力を貸してくれる。しかしその事件についての手慣れた行動は、銀行家などというものではない。さらに、エジプト王家に繋がる革命家と自称する男、元軍人で銃を盗まれたというホテル付きの医師、カードや蛇を操るボードビリアンの男女、なぜか叔母が庇う英国娘リリアンなどが登場する。

 

 ジェーンがサソリに襲われたり、リリアンが急に苦しみだすなど小さな事件が積み重なった後、革命家が射殺された。彼は叔母を含めて、多くの人をゆすっていたらしい。溢れる容疑者の中で、ジェーンは・・・。

 

 考古学者と再婚した後、エジプトを舞台にした作品をいくつも女王クリスティは発表しています。異国で、互いの素性を知らない集団の中で起きる殺人事件というモチーフも良く使われました。本書は作者の「クリスティ愛」にあふれた作品で、時代も本格黄金期のそれで、いい雰囲気が醸し出されていました。続編もあるようなので、探してみることにします。