1968年発表の本書は、ロス・マクドナルドの<リュウ・アーチャーもの>。ハードボイルド小説評論家としても名高い、小鷹信光の翻訳である。私ことアーチャーは、銀行のPR部長セバスチャン家に呼び出された。1日前に一人娘のサンディが家出したので、探して連れ戻してくれとの依頼。両親は互いをなじりあって、アーチャーの気持ちを滅入らせる。ただの家出事件と思ったアーチャーだが、銃器保管庫から二連散弾銃が無くなっていると知り緊張する。
成績優秀な高校生だったサンディは、このところ成績が落ち外泊もするようになった。両親はディヴィという19歳のワルに関わったからだという。彼は孤児で、前科もある札付きだ。アーチャーは彼がアパートの女管理人ロレールに雇われていると知り、そのアパートで2人を見つける。

しかし油断したすきに2人に逃げられ、後には銃床と銃身が切り落とされて残っていた。隠しやすく致命傷を与えられる、危険な武器を2人は持っているのだ。さらにサンディが書いたと思しき邸宅の地図もあった。どうも、その邸宅を襲おうとしているらしい。邸宅は、富豪のハケット家のもの。当主スティーヴンは、実業家でセバスチャンの銀行のオーナーでもある。
アーチャーはハケット家に警告するのだが、2人が先んじてスティーヴンを拉致してしまう。サンディも警備員を殴って傷を負わせているから、共犯と考えていい。アーチャーはディヴィの生い立ちに原因があると考え、彼の過去を探る。彼は3歳の時に列車に轢かれて死んだ父親のそばで、一夜を過ごしたという。しかもその時、付近ではスティーヴンの父親も射殺されている。複雑に絡んだ、2人の男女の過去。アーチャーはディヴィの曾祖母からも聞き取り、事件の深い闇に迫る。
登場するのは、壊れてしまった家庭と愛憎を抱えた男女ばかり。彼らの過去の所業が、若い2人を追い詰めたことをアーチャーが突き止める。華やかに見える白人上流社会の暗部と悲劇を、淡々とした語り口で綴った傑作です。作者のベスト3に入れてもいいと思います。