新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

闇の政商が仕掛ける3つの事件

 2001年発表の本書は、これまで「千年紀の墓標」から「細菌テロを討て!」まで4作を紹介した、トム・クランシー&マーティン・グリーンバーグ共著の<アップリンク社もの>の第5作。このシリーズは8作発表されていて、あと第6作だけが未入手。

 

 今回の主な闘いの舞台は、南極。WWⅡ後の南極条約で、いかなる国も土地を領有したり戦争行為(例え銃の試射でも)してはいけないところだ。ほとんど人が住めない環境だが、土地そのものは広い。おおむねオーストラリア大陸の2倍、欧州大陸の3倍もある。

 

 <アップリンク社>はNASAと共同で、火星探査車の実験をこの地で行っていた。極寒の環境でも稼働し、通信が可能な自律走行マシンである。ところがマシンが行方不明になり、回収に向かった3名の要員も行方不明になってしまった。CEOのゴーディアンは、現地の担当副社長ブリーンのところに保安部長ナイメクを派遣することにした。

 

        

 

 <アップリンク社>の南極基地を排除したいと考えていたのは、現地でよからぬ企みをしている闇政商モーガン。彼はピカソなど有名な画家の贋作で儲けるとともに、核廃棄物で一山当てようとしていた。いずれもモーガンが裏にいるのだが、

 

・南極でのプロジェクトの妨害

・スイス~フランスでの贋作の追及

スコットランド原発地域での連続殺人事件

 

 が並行して描かれる。贋作を追うインターポールやスコットランド警察の(自殺や事故に見せかけた)殺人捜査は、取り立てて面白いものではない。南極でのモーガンが雇った傭兵部隊と、ナイメク達の闘いも、極寒の中での機動や戦闘なので印象が薄くなってしまう。傭兵部隊の長ブルクハルトの戦術は見事だが、特殊な装備を用意しないとまともに動けない気候なので、あまり派手なアクションにはつながらない。

 

 これまで読んだこのシリーズ中では、ちょっとレベルが落ちる作品との印象でした。何しろ、南極の厳しさが実感できないもので・・・。