新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

なぜそこで戦ったか

 2003年発表の本書は、日本中世史が専門の谷口研語氏の、地形と合戦名の研究。原、川、山、島、峠、畷などの地名が付いた合戦や軍事行動を、平安時代から幕末まで70ほども集め、どのような戦いが行われたかを「地の利」を中心に解説している。

 

 「関ケ原」に代表される広めの平地は、大軍が対峙しやすい。また交通の要衝であることが多く、京都に近い関ケ原では「関ケ原の合戦」と「壬申の乱」の2大決戦が行われている。「宇治川」など幾多の合戦の場になった河川敷も、大軍を展開するのが容易だ。ただここでは攻撃側が渡河をするケースがほとんどで、防御側は(時間があれば)橋を落としたり水中に逆茂木などの仕掛けをすることができる。

 

 一方「賤ケ岳」や「倶利伽羅峠」の例がある山岳地では、大軍の展開は難しい。目標である平地や城などに進撃する途中で、これを越えようとして攻撃されるケースが目立つ。大軍でも長く展開しているので、正面は小勢だし側面は無防備だ。

 

        

 

 似たようなことが、「桶狭間」や「長久手」にも言える。狭間や久手は丘陵に挟まれた細長い窪地の意味で、ここを移動していたり滞在している時に奇襲を受けると総崩れになりやすい。畷は低湿地の中を走る細い通路の意味で、周辺は騎馬も移動できない泥田だから、同じように奇襲されれば危うい。

 

 その他「長島」に代表される島の合戦や多くの城攻めについては、頑強に抵抗する籠城兵をいかにうまく料理するか、攻撃側の知恵と工夫が問われる。

 

 竹村公太郎著「日本史の謎は地形で解ける」に似たような書かと思ったのだが、エンジニアリング的な視点は無かった。

 

理系(土木工学)の歴史探偵 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 政権交代時にはやはり京都と関東の勢力がぶつかるので、東海道の合戦が成否を分けたことが分かりました。中でも長良・揖斐・木曽の3川をどう大軍が渡河するかは、キーポイントでしたね。