1987年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第14作。スティーブン王は女帝モードを包囲しているが、女帝側の軍勢もフランスから舞い戻ってきている。シュルーズベリ周辺は平穏なのだが、近くの荘園主ルーデルが死んだ。彼はリンカーンの戦いで王に従って奮戦し、得た傷がもとで命尽きたのだ。彼には5歳の時にシュルーズベリ修道院に預けた、10歳になる息子リチャードがいた。
彼の領地は修道院所有の森に隣接していて、そこには最近従者1人をつれた隠者が棲みついたばかり。彼の母親(リチャードの祖母)ダイオニシアは、早くリチャードを荘園主にして、やはり隣接する荘園主の娘と結婚させたがっている。彼女は夫を亡くし美しくもない22歳。見え見えの政略結婚で、リチャードは荘園に帰りたがらない。

ダイオニシアの要求を、ラドルファス院長は「成人するまで預かる約束」とはねつけたが、奇妙なことが起こり始める。修道院の森に洪水や家畜の乱入があり、隠者の従者ハイアシンスは「リチャードを戻さないので神が怒った」との院長らに伝言を持ってきた。森の異変を防ごうとした森番が負傷し、ハイアシンスの急報でカドフェルが傷の手当をした。
一方、逃げた農奴を追ってきたという荘園主ボシェは、農奴がハイアシンスと名を変えているとの情報を得て捕まえに向かったが、何者かに刺殺されてしまった。死体を見つけたカドフェルは、ハイアシンスとリチャード、森番の娘アネットが協力していることに気づく。ハイアシンスの件とは別に、ダイオシアはリチャードを結婚させる陰謀を巡らせていた。結婚は司祭が執り行うのだが、言うことを聴いてくれる司祭が見つからない。彼女たちが目を付けたのは、流れてきた隠者だった。
田舎町の荘園を巡る話かと思いきや、最後の50ページでモード女帝に関わる歴史上の事件に発展します。ひょっとして英国の歴史に詳しい人なら、この展開を予測できたかもしれません。おそらくは、歴史上の事件をモチーフにした一篇だったのでしょう。