1994年発表の本書は、女優から脚本家に転じ本書でミステリーデビューを果たしたリンダ・ラ・プラントの作品。なんとも言いようのない、悲惨なハードボイルドだ。
ロレイン・ペイジは、ロス市警に勤務する美貌の女警部補。欠点は飲酒で、酔っていて14歳の少年を誤射して殺してしまう。それから彼女の人生は暗転を続け、退職~大量飲酒~夫と娘2人の家族を失い、売春婦にまで身を落とす。風紀係には追われ、性病をうつされ、酒やタバコのせいで肺も肝臓もボロボロだ。ヤクザに顔を切られ前歯も欠けて、見る影も無くなってしまう。

しかし、偶然巻き込まれたハンマーによる連続殺人事件を解決せざるを得なくなって「昔取った杵柄」を思い出すうちに、自信を取り戻していく。もともと彼女は、推理力に優れ粘り強く真犯人を追い詰める優秀な警官だったのだから。ロレインの周りの人々は、ほとんど社会の底辺で生きている。加えて、性倒錯者・性転換者・小児ポルノ業者・売春婦/夫が多く登場して、物語を暗く彩っている。
警察が認知しただけで6人の売春婦が殺されているし、ロレインが襲われた夜に同じ手口で殺された男は、女装癖があったことがわかる。その後も性転換途上の男娼らが殺され、有力な目撃者であるロレインは警察に雇われて犯人探しをする。彼女は大物実業家の兄に容疑をかけるのだが、真犯人は彼女も殺そうと罠を仕掛けてくる。
600ページを越える、陰鬱な雰囲気のハードボイルドで、同じアル中無免許探偵であるローレンス・ブロックのマット・スカダーものに近い。ただ女性の作家として、ここまでひどい堕落をしていくヒロインを描けたことに驚く。前半、底なし沼のような状況に陥っていくのを、冷徹な目で追っている。それが後半の「復活」への伏線だとしても、正直ひどすぎると思う。
作者は本書の前に<BBC>の人気ドラマ「第一容疑者」の脚本も書き、そのノベライズもしているそうです。暗くて長すぎる本書とは違ったミステリーとのことですので、今度はそちらを探してみます。