2015年発表の本書は、マウリツィオ・デ・ジョバンニの<P分署もの>の第四作。舞台は4月のナポリで、ピッツオファルコーネ署の刑事たちは「小さな命」を守るために奔走する。
「ハルク」とあだ名されるロマーノ巡査長は、この朝落ち込んでいた。愛妻ジョルジャが出て行ってしまったのだ。確かにむしゃくしゃしていて、殴ったのは悪かった。でも長年2人の間に子供ができないわだかまりがあり、妻も苦しんでいたのだろう。いつになく早朝に出勤してみると、署の近くのごみ捨て場で産まれたばかりの赤ん坊を見つけた。幸い息はあるが、急いで病院に連れて行くと、重度の感染症だと診断された。署の刑事たちは、捨て子した者を探し出そうと聞き込みを始める。

街の生き字引ピザネッリ副署長のところに、教会の司祭から奇妙な情報がもたらされた。数日前「無理強いされた捨て子でも母親は地獄行きですか」と告解した東欧訛りの女がいたという。司祭は顔を見ていない。
一方チャラ男のアラゴーナ一等巡査は、妙な少年から依頼を受ける。内容は「仔犬がいなくなったので探してほしい」というもの。近辺で、猫や犬が行方不明になるケースが多くなったのは事実。「一番優秀な刑事」と少年に持ち上げられ、アラゴーナは仲間の愛犬を囮にして「誘拐犯」をおびき出す。
ピッザネッリの情報を基に女を探したロヤコーノ警部は、ウクライナ生まれのララという女が殺されていた場所に行きつく。母親を殺し、赤子を捨てた犯人に怒りをたぎらせるロマーノは不眠不休で捜査にのめり込む。ロヤコーノも持ち前の推理力を活かして犯人像を絞り込んでゆくのだが・・・。
4作目にして、個性豊かな刑事たちの日常(*1)がすこしずつ見えてきました。みんな家庭を持って、愛憎に満ちた日々です。本家<87分署もの>や<ダンカン&ジェマもの>には少なかった、食卓の話題が多いのも嬉しいシリーズです。やっぱり食はイタリア(それもナポリ)ですよね。
*1:アラゴーナは大富豪の息子で、一流ホテルで暮らしている